パーフェクトマン

 うちのクラスに、とある男子がいる。

 その男子の名前は、大田おおた君。


 そいつ、顔は整っている。誰が見てもカッコいいやつ。

 あと、身長も高い。180cm以上はある。

 その二点だけで、天は二物を与えたなぁと思うんだよ。


 けど、それに加えて、スポーツ万能で、野球部のエースだったりする。

 私はスポーツは見る専門だけれども、スポーツできるっていうだけでもカッコいい。


 そして、頭も良いの。成績も良いし、授業中寝ても無いし。

 先生からの評判もすごい高い。


 非の付け所が無い。

 パーフェクトっていう感じ。ミスターパーフェクトだよ。

 彼の周りには友達もいっぱいいるし。人望もあるし。

 もう、すべてがパーフェクト。


 けどなぁ……。

 そういう人を見ると、粗探しをしたくなっちゃんだよね。

 ずるいなぁと思う、嫉妬するような気持ちが湧いてくるし、絶対になにか悪い所があるんだよ。


「ねぇねぇ。美幸みゆきってさ、大田君のこと、どう思う?」

「えっ? どうしたのいきなり沙友里さゆり? 大田君はカッコいいって言葉以外、例えようがないよ」


 隣の席の美幸に聞いてみたんだけれども、そう答えられた。

 そりゃあ、まあ私が聞かれたとしても、同じことを思うわけだけれども。


「大田君って、完璧すぎてさ。逆に、何か悪い所があるんじゃないかーって思っちゃうんだよね」

「それは考えすぎだよ。目に見えて悪い所があったとしたらさ、あんなに友達から慕われていないよ」


「それはそうなんだよね。けど、同じ人間なんだよ?何か欠点だってないとさ。不公平じゃない?」

「不公平って何よ。面白いこと言うね。人はそれぞれ違うから良いんじゃん。良い所しかないっていう人も確率的にはいるでしょ?」


「なるほど?」


 何だか納得してしまったけれども、大田君のなにか弱点でも知りたいな。

 小さなことでもいいんだよな。

 例えば、虫が苦手ですーでもいいし。

 何か弱点無いかなー。


 そんな大田君のもとに、女子から差し入れが持ってこられた。


「大田君、このチョコ美味しいんだよ。食べてみてよ? 大田君に食べてもらおうと思って、いっぱい持ってきたんだ!」


 その言葉に対して、大田君は手で制止をして、謝った。


「ごめんね。僕は身体つくりのために、甘いものを控えているんだ」


 おー? 太田君も、断ることってあるんだ。

 全部を受け入れてくれる優等生かと思ったけども。



「せっかくだから、このチョコレートはみんなで食べるといいよ!」


 太田君がそう言うと、女子からはちょっとした反論はあったものの、その時に教室にいた人たちにチョコレートが配られていった。


「どうぞ。大田君からだよ。美味しいんだよこれ」

「ありがとう」


 なんだか、良くわからないけれども。

 大田君のおかげで、チョコが食べられる。


 口に入れると、少しほろ苦いけれども、チョコの本来の甘さが口の中に溢れた。


「……おいしい」

「これも大田君のおかげだね」


 確かにそうだけども。

 粗探しをしていたことが恥ずかしいな……。


 パーフェクトっていうのも、それが個性っていうことだね。

 周りを幸せにするパーフェクトマン。確かに好きになるのも分かるかもな。私も好きになっちゃうかも。

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