豊穣の女神

 小学生が好きな食べ物トップ10知ってますか?

 カレー、ラーメン、ハンバーグ、から揚げ、フライドポテト。

 そんなものがランクインされているんです。


 それらは、全部、全部美味しいの!

 一つでもあれば、幸せで。想像するだけで美味しい!


 それでね。

 そんな強豪たちをおさえて、一位になっているのが……。


 そうなのです! 寿司なのです!



 やっぱり寿司ですよ、寿司。

 日本人たるもの、寿司なのです。

 誰に聞いても、ほとんどの子が答える好きなものが寿司!

 良いよね。美味しいよね。


 だけど一方で、小学生の好きなものだけでは、給食は作られていないんですよね。

 子供の栄養が偏らないようにとか。

 好きなものだけ食べてても、大きくなれないとか。


 そんな理由をつけて、毎日牛乳入れてくるし。

 牛乳嫌いな子はどうしろっていうのよね。

 そんな、大人の都合だよね。


 子供が食べたいと求めるものこそが、子供が本当に必要とする栄養だって思うんだよ!

 そんな中でも。栄養を考えて、同じものだけ食べないようにという意見だけは尊重できまして。

 子供が好きな給食が出る日もあるのです!


 私が長々と語っている、給食!

 これが食べたかったと思う給食!

 それが、ちらし寿司!



 何が美味しいかって、寿司の材料としてね、酢飯とか、玉子とかが美味しくてね。

 ……って、私の脳内解説が終わらないうちに、給食の準備が始まった。



「うぉーー。俺の大好きな給食!」


 今日の給食当番はクラスで一番の食いしん坊の大悟だいご

 テンション上がりすぎて、全部のお皿に対して、大盛にもっていく。


 ……気持ちは分かるけれども、もうちょっと抑えないとだよね。みんな平等が一番だからね。


「うわああああーーーー。ちらし寿司がなくなったーーー!」

「うそでしょーーー!」


 大悟の叫び声につられて、私もついつい叫んじゃった。

 私以外の子も同じく「なんでだよー」とか、「ばかーーー」とか叫んでる。


 ちらし寿司が入っていた容器を見ると、確かに綺麗に空っぽだった。

 大悟、ほんとバカだなぁ……。


 さっきまで騒いでいたクラスは、落胆して黙ってしまった。

 どうするんだよー……。

 これじゃあ、食べれないじゃん……。


 そんな時、助けの知らせが、教室の外からやってきた。



「二組の林原はやしばら先生! 今日さ、うちのクラスの生徒が少なくてさ。給食もらってくれない?」


 急に教室に入ってきた声。

 みんな方向を向いた。

 そこにいたのは、一組の堀江ほりえ先生。


 陽気に絡むように、うちのクラスの林原先生にお願いしている。

 これは、願っても無い申し出。


「豊穣の女神だ!」

「さすが、堀江先生!」

「女神! 女神!」


「えー、私が女神? はは、照れるなー!」


 クラス中のみんなが、堀江先生を持ち上げる。

 堀江先生もまんざらでもない顔をしている。


「ありがとう! 私も豊穣の女神好きだから、その二つ名はありがたく受け取っておくよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る