ボーリング
ピンが跳ぶ。
狙った通りの位置へと飛んで、別のピンも倒す。その時のピンの動きが気持ちいい。遠く離れているものを、思った通りに操れている感覚。
それって、なかなかできることじゃないし。魔法で操ってるみたいな感覚。
その時の音も気持ちが良い。カコンと私の耳に飛び込んで来て、爽快感が増すの。
黒くなった場所を見つめているのは虚しいけども、それが嬉しいの。
「スペア取ったわよ!」
戻って行ってハイタッチする!
ボーリング場に来た私たち四人組。二対二でボーリング対決をしてるんだ。
私と
対戦相手は、
男子と女子と、チームを混ぜれば良かったと思うけれども、そうでなくても、かなりいい勝負をしているんだ。
「やるな、
「ふふ、男子なんかに負けないんですからねー!」
そう言って、私は席に着く。
年頃の男女がボーリングに来たら、それはデートだろっておもうかもしれないけど、そんなことはなくて。ただの友達。
……というか、ライバルというか。
ここにいるみんなが、加奈子を狙ってるの。
「それにしても、加奈子ちゃんって、ボーリング上手いね!」
「ほんとほんと! あまりやったことないんだとしたら、すごいセンスしてるよ!」
「いやー、私なんて全然ですよ。
加奈子は、近付いてくる浩史と貴志をするりと交わして私の隣に来て、腕を掴んできた。
「やっぱり、智ちゃんとチームで良かった!」
「ありがとう!」
私は、加奈子の頭をぽんぽんと撫でる。そうすると加奈子は嬉しそうに自分でも頭を動かして私に撫でられている。目をつぶって幸せそうな顔をして頭をふりふり。
……可愛い。やっぱり私は、加奈子のこと好きだなぁ。
浩史は、悔しがりながら言う。
「けど、勝った方がパフェ食べれるっていう約束だからな!」
「いいよ! 私たちのチームが勝つもん。そしたら、私と加奈子でパフェ食べるんだもんねー!」
「うんうん!」
もう、これは、私の勝ちが見えてそうだよ。
浩史も貴志も、歯を食いしばってる。今にも地団駄しだしそう。ふふふ。
「あ、次は、私から投げる番か! 頑張ってくるからね! 加奈子!」
「うん! 智ちゃん、ファイト!」
加奈子に応援してもらって、戦うボーリングは程よく緊張感もあって。それでいて、加奈子と仲間意識も芽生えて。今まで以上にボーリングが上手くなれてるって気がするんだ。
私は、ボールを持って構える。一息ついて、一歩目を踏み出して、二歩三歩と勢いをつける。
私が、加奈子と楽しめることの一つだけども。
私と加奈子が一番繋がる遊びであるボウリング。
私の投げた球は、勢いよく回転しながら進んでいく。真ん中のピンを倒して、後ろのピンも倒して行く。けど、全部は倒れなかった。
結果は、一つ残ったけど、それは加奈子の分!
「加奈子! あとは任せた!」
「うん! 任せて、智ちゃん!」
加奈子とハイタッチする。
ふふふ。やっぱりボーリングって楽しいな。これ、好きだな。
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