雨、雨、降れ降れ、早く降れー。

 そう思いながら、私は毎日折り畳み傘を持ち歩いてる。


 この前、新しい傘を買ってもらったの。少しレースが付いていて、持ち手も大きくて可愛い傘なの。開いた時にふわっと浮かび上がるようにレースが揺れる傘なんだ。すごく可愛いの。

 けどね、そこも可愛いけれども、もう一つ可愛いところがあってね。濡れると猫の模様が出てくるんだ。濡れた時は違う雰囲気になる傘なの。はぁ、早くこの傘を使いたいなー。

 けど、中々使えない日が続いているの。


 毎年、この時期になると梅雨に入っているんだけどさ。今年は何でか梅雨入りが遅れているらしくて、雨が全然降らないんだよ。だから、この傘を使えないでいるの。

 あぁー、早く雨が降って欲しいなぁー……。



 ◇



 今日も、通学鞄の中に新しい傘が入っている。

 けどね、もう今日は雨が降らないっていうのは、わかっているんだ。朝目が覚めた時から外は明るくてね。カーテンの外には雲も全くない青空が広がっていて。今日の天気は、すぐに晴れだってすぐわかっちゃったんだよ。降水確率ゼロパーセントだなって。

 けど、万が一夕立とかがあれば、傘は使えるっていうのも思うけれども……。そんなことあるわけないし……。まだ梅雨入り前の季節だもんね。はぁあぁ……。



 学校までの道のりは、暑い日差しが降り注ぐ。雨とは、真逆の天気。こんな日に傘を持ち歩いているなんて、重いだけだよねぇ……。なんでこんな日ばかりなんだろうな……。

 誰か、珍しい行動でもして欲しいな。そうしたら、大雨が降ると思うのに。そんなことを他人に頼みたくなっちゃうな。


 もしも、この傘がしばらく使われなかったら。このまま使わないで鞄の中で朽ち果てちゃったりしてね。

 せっかく買ってもらったのにな。



 そう思っていると、なぜか前を歩く女の子が傘をさしていた。その女の子は優雅に歩いていて、とても品があるように見えて、綺麗だと思った。

 傘って、晴れている日にもさしていいんだ……。


 よくよくその女の子を見ていると、クラスメートのあかねだった。


「おはよー! 今日も暑くて大変だね」


「おはよう。どうしたの今日は傘なんか差しちゃってさ。雨降らないと思うよ?」



 私が聞くと、茜は笑って答えてくれた。


「これはね、日傘なんだよ。折りたたみ傘だけど日傘と雨用の両用だからね。こんなマークが付いていると、日傘としても使えるっていうことだよ」


「え、そんな傘があるの?」


 驚いて、鞄の中にある傘を見てみると、私のも同じようにタグが付いていた。そのまま、私も傘を開いてみると、確かに日傘のようで、暑い日差しを遮ってくれた。


 そうだったんだ。この傘、可愛いのに、晴れでも使えるんだ。

 ますます、この傘が好きになっちゃったな。

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