梅を漬ける
梅雨が始まるか始まらないかという時期。
六月の初めになると、うちでは梅を漬けるんだ。今年も同じ季節に、お母さんの実家から大量の梅が届いた。
「お母さん! 今年も来たね!」
うんうんと頷くお母さん。嬉しそうな顔をしている。お母さんもやっぱり楽しみにしていたみたい。ちょっと鼻歌まで歌ってる。
家に梅が着くと、その日に仕込みをしてしまうんだ。梅って、すぐに悪くなってしまうらしくて。
台所に段ボールを持っていき、開ける。そうすると、梅の匂いが部屋中に広がるんだ。それがまた良い。いつもの季節がまた来たんだなって感じる。
「今年の梅も、良い出来だね!」
「そうみたいだね。今年も良い感じにできるといいね」
私とお母さんは梅を取り出すと、まずは水で洗う。触ってみるとわかるけれど、硬くて良い触り心地をしている。ここから美味しいエキスが出るんだっていう固さ。
水で洗った後は、梅のへた部分を取っていく。つま楊枝を使って一個一個。身を傷つけないように慎重にして。ここで傷がついてしまうと、そこから腐ってしまうんだって。気を付けないと。
「今年は、梅酒以外に、梅シロップ作ってみようか?」
「え、そんなのができるの?」
うちでは、毎年お父さんのために梅酒を作っている。それ専用の大きな瓶が合って、六月に大量に漬けた梅酒を一年かけて飲んでいるんだ。
基にするのは、色んなお酒で。ホワイトリカ―っていうのを使うと、基本的な梅酒になるんだけれども、それ以外にも、日本酒とか、ウイスキーで漬けたりするんだ。これで色々楽しめるって言ってるんだよ。お父さんが喜んでるのを見るのも楽しいけれども。シロップっていうのもできるんだ。
「シロップにするとね、梅ジュースが作れるんだよ」
「そうなの! お父さんが飲んでるみたいな?」
「ふふ、味は同じかな? 自分のお好みで濃くもできるし、薄くもできるし、炭酸で割ったりすると、もっと美味しいんだよ」
「えぇーー! やったー! いっぱい作ろう!」
「ふふふ。そうだね」
私とお母さんは、大量の梅の仕込みをしていく。ヘタを取ったら、それを干す作業。新聞紙を引いて、その上に梅を置いてく。これが乾いたら、瓶に詰めるの。
瓶に詰める時は、氷砂糖と交互に梅を並べて行くんだ。その作業もまた楽しいの。どのくらいの塩梅になるかなーって。氷砂糖を多くしてみたり。お父さんは意外と甘いのが好きだったりするからね。
今年は、私の梅シロップもあるから。そっちもどんな味付けにするか楽しみだな。
「お母さん、梅をつけるって楽しいね。自分の好みに出来るし。味を想像するだけで口の中に唾液が溢れちゃう! 私、梅を漬けるの好きだよ!」
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