姉とのショッピング

 大音量で音楽を流すトラックが、目の前を通って行った。


「……パリラ、高収入?」

「いや、そんな広告をまじまじと見なくていいよ。あのトラックは気にしないで大丈夫だよ」


 休みの日を利用して、東京に来てみたの。

 お姉ちゃんが大学進学をきっかけにして上京したから、お姉ちゃんのところに勢いで来てみたんだ。


 まず、田舎では考えられないくらい人が多いことにびっくりしたの。

 その次には、コンビニが多いことにもびっくりしたし。

 次にびっくりしたのは、今のトラック。

 ちょっと前に、渋谷のスクランブル交差点に着いたんだ。


 ◇


「これが、渋谷のスクランブル交差点っていうところなんだね。すごい。人が多いよ。感動!」

「そんな、感動するところじゃないからさ。ほら、あれが109だよ」


 109。

 スクランブル交差点を渡った先にある魔王城のような出で立ち。

 ドラゴンクエスト1にある竜王の城みたいだよね。

 最初にいる城ラダトーム城が渋谷駅で。

 そこから竜王の城は川に阻まれているんだけれども。その川が、このスクランブル交差点みたい。

 虹の橋の横断歩道でつながっているって感じ。

 これは、お姉ちゃんに言っても伝わらないだろうから、帰ったら友達に言ってみようっと。


 そんな時に、川を流れるようにやってきたのが、でっかいトラック。

 大音量を流しながら、楽しそうに通ってきたの。


 ――パーリラ、バリラ高収入!


「お姉ちゃん、やっぱりあれ気になるよ! 東京っていうのは高収入バイトにあふれているの?」

「私からは、ノーコメントです」


「教えてよー。お姉ちゃんのケチー。何のバイトなの? 私もやってみたいよー!」

「ケチでいいですー。妹を守るのが私の役目ですー。まだあなたには、早いのよ」


 そんなことを言いながら、109へと行く。


 ◇


 見たことない景色。何もかもが新鮮。

 こんなところが、日本にあるんだなって。

 同じ日本にいるのに、全然違うよ。


「お姉ちゃん、連れてきてくれてありがとう」


 中にあるお店を順繰り見ながら階を上がっていって。

 久しぶりに会ったお姉ちゃんとの会話を楽しんでいた。

 109っていう魔王城の攻略よりも、お姉ちゃんといるっていうことが楽しかった。



 私とお姉ちゃんは、109の上層階まで上がると、休憩にカフェでお茶を飲んでまったりと過ごした。


「お姉ちゃん、やっぱり東京って楽しいね」

「そう? それなら良かった。楽しんでもらえて何よりだよ」


 ウインドウショッピングは、そろそろ終わろうと、私たちはお茶を飲み終わったら、109を一番下まで降りて行った。地上まで降りても、気分は楽しいままだった。


 ――パーリラ、パリラ高収入!



 最初は珍しかったけれども、もう特に気にならなくなっていた。

 やっぱり私は、お姉ちゃんとショッピングするのが好きだな。

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