探偵ごっこ
事件が起こったのは、数分前のこと。
それは、殺人事件と同じくらいの出来事だ。
誰が殺されたかというと、私だ。
何故かというと、私が今日一日ずーーーっと楽しみにしていたプリンがなくなっているの!!
それって、私の生きる希望をすべて奪い去っているのと同じようなもの! 私、死んじゃうよ! !
怒りは一気に頭のてっぺんまで登ったけれども、それと同時に喜びも沸き上がっていたの。
それはね。
犯人を捜すということが、合法的にできるからなのです。
そうなんです。
私は、プリンが大好きなのと同時に、推理オタクなんです。
お弁当を食べに集まっている友達に向かって、私は言う。
「皆さん、聞いてください。大事件です」
極めて冷静に。
声を荒げず、淡々と。
はたから見たら、きっと私の眼鏡は光っていることだろう。
自分の子供を無理やりロボットに乗せようとしているアニメのお父さんみたいに。
「何言っているの?」
「楽しく話してたのに、いきなりどしたの?」
「私のプリンが盗まれたんです。これはまさしく、誘拐殺人です!」
私の発言に対して、友達は顔を見合わせると、ブッと噴き出した。
「何言ってるのよ。そんな物騒な?」
「単純に、家に忘れちゃっただけじゃないの?」
「いえ、私が忘れるなんて絶対に無い! だから、今から私が推理を披露して、プリンを取り返したいと思います! 犯人はこの中にいる!」
私の瞳の中には、三分割された画面で容疑者が映し出されている。
左から八重子、裕子、洋子。
みんな犯人のような顔をして並んでいる。
容疑者は一緒にお弁当を食べていた、この三人。
「隠し通せると思わない方がいいからね。よりによってプリンを取るなんて、本気を出した時の私の推理は、必ず当たるんだから!」
長いセリフの後に、決め台詞があるの。
なので、一呼吸吸ってから。
すー……。
は一……。
「絶対に突き止めてやるんだから! おじいちゃんの名にかけて!」
三人とも、やれやれといった風に私を見ていた。
「……で、どうやって、犯人を突き止めるの?」
「ふっふっふ。私には、科学的に突き止めることができるの。あのプリンを私以外の人が食べるとね」
そこまで言うと、教室の扉が勢いよく開いた。
開け放たれた扉の先にいたのは、私の妹だ。
「お姉ちゃん! なにこのプリン! 激アマなんですけど!!」
私は、うんうんと、首を縦に振る。
「今、新犯人がわかりました。それは、あいつ。私の妹です! 私のプリンは、私に合うように激アマ仕様にしているんです! 私じゃない人が食べたらああなる!」
「お姉ちゃん! 私のプリン食べちゃったでしょ? 冷蔵庫に入れてるやつ持ってきたのに! これ私のじゃないじゃん!」
「あれ、私食べちゃったっけ? ははは。ごめん」
「ギルティだよ!! 私のプリン!」
私が妹に怒られる様子を、容疑者になっていた友達たちはやれやれと見ていた。
妹に肩を掴まれて、ゆさゆさとされる私。
「やっぱり、探偵ごっこって楽しいね。私、好きだよー」
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