ガチ勢

 画面の中には、戦場に駆り出された兵士。


 ……とは言い難い、子供のキャラがいっぱい。それも、三頭身くらいの可愛いキャラクター。



 その子供のキャラクターが戦場で、可愛い武器をもって戦うっていうゲーム。

 戦場も、なんだか可愛い名前をしているから、子供の遊び場っていう感じ。


 武器も、可愛らしいものばかりなんだよ。バケツとか、筆とか、掃除に使うようなコロコロローラーとか。全体的に可愛い。


「じゃあ、コントローラを上に向けたり、下に向けたりして?」


 須賀すがちゃんに言われるまま手首を動かすと、画面のカメラの向きが上を向いたり下を向いたりして、視点が動いた。


「えっ、すごいー! この手の動きで向きが変わるの?未来のゲームじゃん!」

「いやいや、これが現代のゲームだよ」


「こんな世界があるんだね。ははは、面白い」


 コントローラーを上下左右に動かして、カメラを移動させて遊んでみた。

 これだけでも楽しい。


 私は初めてやるゲーム。

 須賀ちゃんが面白いから一緒にやろうって言ってくれたの。

 ソフトを二個持っているらしくて、一つ貸してくれたんだ。


 学校から家に帰ってきて、すぐにゲームを起動させて、須賀ちゃんと電話をつないで教えてもらっているんだ。


「ボタンを押したら、ウエポンからインクが飛ぶの。別なボタンを推したら、イカに変形できたりするからね」

「え? ウエポン? インク? イカが出てきて? いきなり難しいのがいっぱい出てきたよ……」


 電話の向こう側で須賀ちゃんは「えーっと……」って言って困ってそうだったけれども、電話のこっち側では私が困っているわけで。


「まぁ、やってたらなれるからさ! 早速行ってみよ―!」


 そういって、対戦ゲームへ誘導されて始まった。


「じゃあやりながら、教えるからね。ボタンを押してみて」

「こうかな?」


 私が持っていた銃から、インクが飛び出してきた。


「そうそうそう。それで、地面を縫って陣地を増やすの。最終的に陣地が多い方が勝ちっていうゲームだよ!」

「なるほどなるほど。じゃあ、地道に塗っていこう」


「それでね、敵も同じく地面に塗るんだけど、相手を倒そうとしてくるわけ。来た来た」


 画面上に、私の色とは違う色をしたキャラクターが現れた。

 きっとこれが敵っていうことだね。


 けど、どうしたらいいんだろ。

 私はどうしたら良いかわからなくて、うろうろとしてしまった。


「これは、こうやってね?」


 須賀ちゃんが、喋る間に敵は動かなくなった。

 そしていなくなった。


「これがキルっていうやつ。敵を倒したらいいんだよ」

「いや、そんな簡単に言われても……」


「大丈夫、大丈夫。やっているうちになれるよ。私みたいな『ガチ勢』が助けてくれることもあるしね!」


 なかなか奥が深そうだなー。

 けど、助けてくれる、須賀ちゃんはちょっとカッコ良かったかも。

 ガチ勢って、なんかいいな。私好きかも。

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