マーマレード
部活で疲れた日は、テレビに癒されますよね。
はぁ……。
動物物の番組は、『神』です……。
これは、もう。
全ての動物に感謝です。
あと、この番組を使っているスタッフさんとか、テレビ局で働いている人。
その人にお弁当を作っている人も。
そして、その食材を作っている農家さんにも。
大・大・大感謝です。
みんな、ありがとう。
はぁー……。
いいね……。
猫。
もふもふ。
見てるだけで、もうお腹いっぱいだな。
うん。今日は疲れたし。
最後は、甘いデザートでも食べて、食事終わろうかな!
そう思っていると、後ろから声が聞こえて来た。
「もったいないぞー……」
「うわっ! なになに、お母さんっ!」
お母さんが、私の肩に顔を乗せてきた。
そして、耳元で囁くように言うのだ。
「その、ご飯粒ー……。ちゃんと全部食べないと、もったいないぞー……」
「は、はぁ?」
お母さんは、私の肩から顔を離すと、前に回り込んで注意してきた。
「食べ物を残すのは、ダメだよ? ちゃんと栄養取らないと!」
「それはそうかもだけど、もう疲れちゃったんだよー……デザートで栄養補給させてよー……」
「まぁ、それならしょうがないか……」
お母さんは、そう言うと冷蔵庫の方へと向かった。
いつもお母さんは、「食べ物を残しちゃだめだよ」とか、「一粒も残さないように」って言ってくるんだよ。
スイカ食べる時も、皮の白い所が見えるまで食べろーっていうし。
魚の皮も食べさせられるし。
なんだかそれって、けち臭いよねー。
そういうのって、「みっともないから外ではやるな」って言われると思うんだよ。
けど、うちのお母さんは、外でも構わず言ってくるの。
「エビフライのしっぽは残しちゃだめだよ」って。
流石に恥ずかしいから、お弁当にエビフライ入っている時は残して帰ってくるんだけどさ。
それで、いつも怒られるの。
ちょっと考え物だよね。
「おまたせー!」
お母さんは、そう言って、ちょっとご機嫌で帰ってきた。
手には、オレンジ色のケーキを持っている。
「えっ! 今日のデザートはケーキなの!? やったー!」
「ふふふ。全部食べちゃっていいよー?」
なんだか優しいお母さん。
こんなこと滅多にないんだけどな。
私の疲れを労わってくれているのか?
机に置かれたオレンジケーキ。
フォークで刺して、一口食べる。
「おー! なんだか濃い味! すごい美味しいよ、これ!」
「そうでしょ、そうでしょー? お母さんが作ったんだよ!」
「え、すごい! お母さん! 天才? どうやって作ったの?」
「ふふふ。これはね、『マーマレード』を使ったのよ」
「なにそれ? ミカンの缶詰とかじゃないの?」
「ちっちっち。『マーマレード』っていうのはね、オレンジの皮まで全部入れて作ったジャムなんだよ?」
「ほえ?」
素っ頓狂な声が出てしまった。
「これで、無駄無く、美味しく食べれるでしょ?」
「確かに美味しい……」
私は、残さず全て平らげた。
最近、SDGsとかいう言葉があるけれども。
それをしっかり実現できている。
食材の無駄無く。
本当は美味しいのに、今まで捨てちゃってたんだって。
そんなことに気付かされる。
食わず嫌いなだけで、本当は良いものって沢山あるんだ。
お母さんは、ニコニコと笑って私のことを見ていた。
「ごちそうさま」を求めている時の顔だ。
「お母さん、ありがとう。とってもおいしかったよ。私、マーマレードって好き」
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