母の日

 今日は母の日。

 いつも頑張ってるお母さんに何かプレゼントがしたいな。

 何が良いんだろう?


 直接お母さんに聞いてみよう。

 わからない時は、直接本人に聞くといいって、お母さんに教えてもらったし。


 台所まで行って、お母さんに聞いてみる。


「ねぇねぇ、お母さん」


 お母さんは忙しそうにして、全然聞こえていないみたい。

 こういう時は、ズボンのすそを引っ張ってこちらを見てもらうん。


「ねぇねぇ、お母さん」

「えー? ちょっと待って、今忙しいの!」


 お母さんは、昼ごはんの準備で忙しそう。

 しょうがない。

 一番は、お母さんに聞くことだと思ったんだけどな。



 お母さんが欲しいものを知りたいだけなんだけど。

 忙しくて大変そう。


 そうか!

 お母さんが忙しくならないように、お手伝いしてあげるのが良いかもしれない!


 ご飯が出来た時用に、テーブルの上を片付けておこう!

 それだったら、私にもできる。

 私はテーブルへと向かう。


 テーブルの上には、誰かの飲みかけのコップが数個置いてある。

 小さな私にとっては、少し高いテーブル。


 なんとか手が届くから、それをどかして。

 それで、テーブルを拭いて。


 お母さんがいつもやっていること。

 これをやると、お母さんがきっと助かるはず。


 ――ガシャン。



「あっ……」



 倒れたコップから、液体がこぼれて机の上が水浸し。

 やってしまった……。


「ちょっとちょっと、何やっているの!」

「テーブルの上をきれいにしようと……」


「大丈夫、大丈夫、そういうのやらないで平気よ」


 お母さんは、私が拭いていた布巾を取ると、ササっとテーブルを拭いてしまった。

 私がやるのよりも、何倍も早く終わる……。



「……私も何か手伝いたかったの」

「いいよいいよ、お母さん忙しいから。結子ゆうこはちょっと遊んでいて?」


 突き放すように言うお母さん。

 私じゃ、お母さんのためにならないのかな……。


「……今日は、母の日だから、何かお手伝いしたくて」


 私の言葉に、お母さんはハッとした顔をした。


「……そっか。今日はそんな日だったっけ」

「うん」


 お母さんは、少ししゃがんで私に目線を合わせてくれた。


「結子ありがとう。手伝おうとしてくれてたのに、叱っちゃってごめんね」

「……いいの。私全然上手くできないし」


 お母さんは、首を横に振った。


「手伝おうっていう、その気持ちがありがたいんだよ」

「そうなの?」



「気持ちのプレゼント、とても嬉しいよ。ありがとう」


 そう言って、お母さんは私の頭を撫でてくれた。


「もうすぐご飯作り終わるから、盛り付ける部分を手伝ってもらいたいかな? お母さんと一緒に美味しいのを作ろう!」

「うん!」


 私はなんにも出来てないけれども。

 元気なお母さんが見れた。


「結子が手伝ってくれると、お母さんとっても嬉しいんだよ!」


 お母さんが笑ってくれる。

 私は、母の日が好き。

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