声優さんの声
連休が明けてから、なんだか身体がだるいんだよね。
これは、なにか流行り病なのかも知れない。
困ったなぁー……。
「あぁー……。だるいー……。私病気かもー……」
私は机に顔をつける。
そのまま、横を向く。
そうすると、隣の席の
円香から話しかけてくる。
「病気な訳ないじゃーん」
「いやー、精神的に来る病気もあるんだよー」
「なるほどねー。じゃあ私も病気ってことになるかな?」
「最近、なんだか、あんまり眠れないんだよねー……」
「あぁ、わかるー。少し前の私がそうだったよ」
「これってさー、どうにかならないかなー?」
私の発言を聞くと、円香は少し楽しそうな顔をして、机から顔を離した。
「じゃあさ、こういうの効くと良いかもよ! ASMRっていうんだけど、寝るときによく聞いているんだ。これがあるとすごい、寝つきが良いんだよ!」
なんだか、楽しそうにしてる円香だけれども。
ASMRってなんだ?
私には全然分からない……。
むしろ、疑わしい……。
私は机に顔をつけたまま、円香を見上げる。
「……そんなことって、あるのー?」
「本当、本当。やってみてよ! ちなみにね、これなんだけどさ。聞いてみてよ!」
円香は、ワクワクした顔をしながらイヤホンを取り出した。
そして、机に付けていない方の私の耳にイヤホンを差し込んできた。
――さわさわさわさわ。
イヤホンから、すごくくすぐったい音が耳に飛び込んできた。
びっくりして、起き上がってしまった。
「な、なにこれっ!」
「ふふ。最初はそうなるよね。これがASMRだよ。すごいでしょ。まだ音だけだから、続きを聞いて聞いて!」
「……う、うん」
私はイヤホンを耳に入れる。
また、音が聞こえてくる。
――しゅるしゅるしゅるしゅる。
うぅぅ……。
なんだからゾワゾワする……。
これを聞いたら、本当に眠れるのかな……?
「よく来てくれたね。いらっしゃい」
ひぃっ。
今度は人の声っ!
ゆっくりした喋り方。
それも囁き声で。
そんな声が聞こえてきた。
円香はニヤニヤして私の反応を見ていた。
なんか気に触るけど、とりあえず聞いてみよう。
「今日もお疲れ様」
……う、うん。
「毎日よく頑張ってるよ。えらいよ」
……うんうん。
「心配事でもあるのかな?」
……まぁ、そうかも。
「君なら大丈夫。いつも頑張ってるの、知ってるよ」
……あ、ありがとう、ございます。
やっぱり円香はニヤニヤしている。
「どう? これ、よくない? 優しい声に包まれてるみたいで。幸せな気分になったと思ったら、寝れちゃってるんだよ!」
円香は声優オタクだからな……。
その気持ちをわかってしまうのが悔しいけど。
「……これ、いいね。私、この声優さんの声好き」
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