子供の日

 休日の朝だから、私はずっと寝てる。

 寝返りごろごろ。


 目覚まし時計もセットしてないし。

 スマホも目覚ましの設定を切ってる。

 私は、完全に起きる気が無いの。


 特に今日に関しては、一日中寝てやろうと思って、昨日の夜も夜更かししてたし。

 徹夜でアニメ一気見って、とっても楽しいんだよ。

 途切れることが無いし、邪魔されることも無いし。

 それはそれは、幸せな時間が続くの。



 そうすると、好きなアニメの世界にひたれてね。

 それで、運が良ければ、そのアニメの夢まで見れるんだよ。

 幸せな時間がずっと続く感じなの。


 ちょうど目が覚める頃に見る夢が、記憶に残っている夢。

 だから、起きるところがとっても重要。


 夢を覚えているためには、自然に目を覚ますことが重要なんだ。

 例えばトイレに行きたくなって起きる時、大抵の場合トイレに行きたい夢を見てるんだよね。

 自然の摂理に合わせて起きれば夢を覚えているんだ。

 けど、流石に好きなアニメの夢の途中で、トイレに行きたくなるっていう、そんなストーリーの夢には出会いたくないわけで。


 だから、ちょうど良く目覚める為には、朝の日差しで目覚めるのが一番。

 夜更かしすると、それでも中々起きないから、夢が長続きもするんだ。

 とっても良いよね。


 そんなことを夢の中でも思いながら寝ていたら、部屋の外から怒鳴り声が聞こえた。


「休日だからって、ずっと寝てないで早く起きるのよー!」



 その声で、私の推しキャラの姿が薄くなっていく。


「そろそろ、お別れの時間みたいだね。また今度会えたらいいね」

「えっ……、いや。もう少し一緒にお話ししたい」




清子きよこ! 早く起きなさい!」


 私は、パチッと目が覚めた。


 朝から!

 なんで、休日なのに起こすのよ!

 私は、すぐにベッドから起き上がって、お母さんのところまで行く!


「起きたよ! 別にいいじゃん、私の好きに起きる時間決めさせてよ!」

「そんなこと言ったって、そろそろ早く起きる習慣に戻しておかないと、休みボケするわよ?」


「もう、ありがた迷惑だよ!」


 お母さん、やれやれっていう顔をしていく。

 これは、いつまでも私のことを子ども扱いしているんだよね。

 ここは、しっかりと言ってあげないと。


「もう私は高校生だよ! 大人扱いしてよ!」



 私の一声に、お母さんはハッとした顔をした。


「そうよね。清子はもう子供じゃないよね……」


 少し寂しそうな顔をするお母さん。

 けど、このくらい言わないと、子離れもできないよ。きっと。


 お母さんは、寂しそうな顔のまま私に言ってきた。


「今日はさ、こどもの日だったから、お寿司でも食べに行って、ケーキでも買って帰ってこようかなって思ってたんだけど……」


 お母さんは、やっぱり私を子供扱いする。

 そんなので、心動かされるなんて思っているなんて。


「回るお寿司だけど、今日は値段に拘らずに100円以外のお皿のお寿司食べてもいいし」


 ……私がそんなのに釣られるなんて思っているんだよ。


「あと、あなたが食べたいって言ってた、隣駅のケーキ屋さんで買おうかなって……」


 ……そんなので、釣られるなんて。


「……清子はもう、子供じゃないんだもんね」

「……いや、私は子供じゃないけど、それは明日からでも良いかもな」


「じゃあ、お寿司食べに行きましょ!」


 こんなので、釣られるなんて、やっぱり私はまだ子供なんだって思う。

 そうは言っても、いつまでも私はお母さんの子供なわけだし。

 特別に甘やかしてくれる、子供の日って好き。

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