派手な髪色

 ゴールデンウィーク真っ只中。

 どこかに行けばお金もかかるわけですし。


 私は友達の裕子ゆうこと、オンラインゲームをして楽しむ。

 なんだか、いつもの休日の延長戦って感じ。

 この休日がずーっと続けばいいのになって思っちゃうよね。


 そんな感じで、まったり遊んでいたら、唐突に裕子が言い出した。


「私さ、髪染めたんだ―!」


 唐突なカミングアウト。


「ほら見て見て一!」


 ビデオ通話がオンになると、金髪の裕子がいた。

 初めてとは思えない脱色具合。

 金髪というのか、白く感じる色。

 すごく綺麗。


「ゴールデンなウィークだから、金髪だぜ!」


 髪型もショートカットにしていた。

 裕子のイメチェンが激しい。

 パッと見、裕子とは思えないくらい、別の人に感じた。


 単純な子だなとは思っていたけれども、やることがいつも普通とはかけ離れている気がするよ。


「どうどう? カッコいいでしょ?」

「確かに、カッコいい。すごい綺麗」


 私の感想に対して、裕子はうんうんと満足そうに頷いていた。


「私の行ってる美容院がさ、腕も良くて安いんだよね。そだそだ、友達紹介すると安くなるんだって! 詩織しおりちゃんも試しにやってみよーよ!」

「いや、私はそんな……。こんな急に髪色変えるなんて、周りの目が気になり過ぎちゃうだろうし。第一、私には似合わないだろうし」


「大丈夫、詩織ちゃんなら似合うよ!」

「そ、そうかな?」


 根拠のない自信は、裕子の得意分野。

 そして、押しに弱い所は、私の得意分野。


 この流れは、断れなさそうだな。


 一大決心っていうわけじゃないけれども。

 ちょっと、お母さんにもメール送っておこう。


「娘が髪を染めても、不良になったと思わないでください。それは、ファッションです。私はこれからもお母さんが大好きです」


 なんだか、遺書みたいな書き方になっちゃったかも。

 髪染めるっていうだけだけど。


 しばらくしたら、髪伸びてきてすぐに戻るし。

 染め直しても良いし。

 タトゥーとかピアス開けるのとは少し違うと思うんだ。

 もう少し気軽というか。


 けど、そんな衝動的にしちゃっていいのかな?


 私がぐるぐると考えを巡らせていると、お母さんから返事が返ってきた。


「いいよ! 若いうちは、犯罪以外なら何でもしてきな!」


 私の周りには、男勝りな女の人ばかりだな……。

 その結果を、裕子にも伝える。


「お母さんも良いって言ってくれたよ」

「ナイス! 詩織ちゃんママ!」


 裕子は、親指を立てて、こちらに良いねってしてくれた。


「じゃあさ、どんな色にしようか決めよ! ゲームはいったん置いておいて。このアプリ使うと、髪色変えたあとの自分が見えるんだよ!」

「へぇ。そういうのもあるんだね。ちょっとやってみる」


 アプリを操作して、金髪の私を見てみる。

 ……意外と、可愛いかもしれない。


「詩織ちゃんも、金髪良いかもね! 私とお揃いでリンクコーデだね!」

「それも楽しそうかも。ふふ」


 髪を染めるっていうのも、楽しいのかもしれない。

 本当にやるのかは、ちょっと勇気がいるけれども。

 派手な髪色の私が、スマホの中で笑っている。

 派手な髪色って、意外と好きかも。

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