畳の匂い
うちの家族は、GWになると毎年帰省するんだ。
今年もお母さんに連れられて、お母さんの実家へと向かっている。
東北のとある県にある家。
実家についてからも使うからと、お母さんの運転で向かうんだ。
帰省も慣れたもので、スイスイと高速道路を進んでいく。
高速道路から見える景色。
この景色を見ると、GWになったんだなって感じるな。
お母さんのお気に入りの音楽をかけて。
途中のパーキングエリアで休憩を挟みながら。
速度は速いけれども、ゆっくりとゆっくりと北へと車は進んで行く。
◇
今年も順調に進み、もう高速道路の終わりが見えてきた。
いつもと同じところで高速道路を降りて、街中を走っていく。
東北って、丁度今頃に桜が咲くんだよね。
車の中から、周りの景色がちらちらと見える。
今年は、例年よりも開花が早かったらしくて、既に葉桜となっているようだった。
今年も見れるかと期待していたのに、残念だな。
少しだけでも咲いてる桜は無いかと、周りを見ても、やはり無いようだった。
そうやって周りの景色を見ていると、なんだかゆっくりと感じる。
高速道路を降りたばかりだからなのかもしれないけど、東北に来ると時間がゆっくりになっている気がする。
自然は多いし、ずーっと景色が動かないって感じて。
私は、この県が好きだな。
◇
お母さんの実家は、昔ながらの家という感じ。
その実家へとやっと着いた。
車を降りると、おばあちゃんが迎えてくれた。
「お疲れ様、良く来てくれたね」
優しく笑うおばあちゃん。
今年もちゃんと元気そう。
おばあちゃんは、私が小さい頃からおばあちゃんなんだ。
「ただいま」
お母さんは、おばあちゃんに挨拶をすると、二人で握手しあっていた。
電話では、口喧嘩もするけど、仲良しなんだよね。
「
そう言って、私の頭を撫でてくれるおばあちゃん。
いつまでも、私は子供じゃないんだけどな。
おばあちゃんに案内されて家に入ると、畳の香りが、静かに部屋を満たしている。
いつも通り、小さい頃に過ごしたあの部屋に案内された。
荷物を置きながら、懐かしい感覚が心を満たす。
この部屋に来て初めにやることは、おじいちゃんへの挨拶。
「ただいま」
小さく呟くと、仏壇のおじいちゃんの遺影が優しく見守ってくれているようだった。
おじいちゃん、私、帰ってきたよ。
おじいちゃんがいつも笑顔で迎えてくれたこの部屋。
変わらないこの空間に、ふと安堵の息をつく。
窓から差し込む柔らかな光が、畳に映える。
おじいちゃんも、この光が好きだったんだよね。
そう聞いて、私もこの部屋が好きになった。
挨拶を済ませると、畳の上でごろんと横になり、天井を見上げる。
ここにいると、もはや時間が流れていないみたい。
とても心が落ち着く。
それを感じさせるのは、部屋に充満している畳の匂いかもしれない。
私はこの畳の匂いが好きだ。
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