七人の侍
私の家では、夕飯の時は学校の話をしたりする。
家族の団欒をしようって、ママが私に質問をして来るようになったんだ。
なんとなく、それでも楽しいんだけどね。
「今日は、学校で何があったの?」
私が高校生になっても、こんな質問をしてくるんだよ、ママったら。
ママはウキウキして聞いてくる。
なんだか、私より子供っぽいよね。
そんなママを見ると、私も少し楽しくなっちゃうけども。
私は、ママに教えてあげる。
「英語で好きな映画を説明する授業があるんだって」
「じゃあ、
修学旅行の夜みたい。
そんな感じでウキウキしてるなぁ、もう·····。
好きなことについて話すのは楽しいけどね。
「好きな映画なんていっぱいあるからさ、すごく迷うんだよね」
「そうなの? ママだったらね。メリーポピンズを説明するなー。あれすごく好きなのよ」
……むー。
ママは、人の話をすぐ取るんだから。
修学旅行のよるに、好きな人を聞くんだったら、最後まで聞いてほしいよね。
「ママの話は聞いてないよー。私の映画の話させてよー」
「うふふ。迷ってるみたいだからね、例を出したのよ」
「もう決めたのがあるもん」
私は映画が大好きなの。
昔から好きだった訳じゃなくて、おじいちゃんと一緒に見てるうちに好きになったの。
私の一番好きな映画は、『七人の侍』。
おじいちゃんから受け継いだ白黒の古い映画『七人の侍』は、私の心の支えだった。
その映画に出てくる侍たちのように、私も強くありたいといつも思っている。
私は、テレビ台の所に並べてあるDVDのパッケージを指差した。
「私が好きなのは、おじいちゃんのお気に入りだったやつだよ」
私の答えに、ママは微笑みながら言った。
「そしたら、あなたもおじいちゃんみたいに、映画の中の人物になりきってみたら?」
おじいちゃんも、確かに映画のマネ良くしてたな。
楽しく話したら、英語が上手くなくても、良い点数をくれるかもしれない。
もし私が侍だったら、どんな風に行動するだろうか。
百姓さんを助けるお話。
仲間の大切さを伝えてくれたんだよなー。
おじいちゃんなら、どうしただろうな……?
奥の部屋のドアが開いた。
「あっ。おじいちゃん」
「話は聞こえてきたぞ!」
そう言いながら歩いてくると、おじいちゃんは私の前の席に座った。
手を合わせて言う。
「この飯、おろそかには食わんぞ!」
「……あ。それ、島田勘兵衛のセリフだね。名シーン!」
うんうんと、おじいちゃんは嬉しそうに頷いた。
けど、その後すぐにお母さんに怒られてた。
「食べ始める時は、いただきますでしょ?」
「……すまぬ」
私が好きな名シーンを説明しようかな。
うーん。けど、選べないな。
全部のシーンが好きだからね、七人の侍!
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