バーバパパ

「ねぇ、早紀さきちゃん。バーバパパのキャラでどの子が好き?」

「えーっ……?」


 私は言葉に詰まってしまった。

 バーバパパのシリーズに出てくるキャラクターで何が好きって言われても、そんなのわからないな……。

 これは、私を試しているのかな?

 きっと、ツッコミの腕を試されているんだよね。

 どれが好きとか、そんな話している人見たことないし。

 キャラクターを全員知っている人とか、絶対いないよね。


 とりあえず、確認してみよう。


「えっと、バーバパパって、ボーリングのピンみたいな形をしてる、あれのこと?」

「早紀ちゃん。それは、バーバママの方だよ? もうボケないでよー。バーバパパに出てくる女の子の方の形は確かにボーリングのピンに似ているかもだけれども。下半身が太くなっていて、中の方はくびれがあって。それで上半身は少しだけふっくらしている。バーバママは黒い色をしているから、そんなにボーリングのピンを意識したことなかったけれども、確かに言われてみたらそうかもしれないね。すごいね早紀さきちゃん。バーバママが好きってことかな?」


 千恵ちえちゃんって天然なところもある。

 おっとりしていて、ちょっとしたお嬢様なのかなって思うところもあるし。


 どこまでが本気なのか、見分けがつきにくいんだよね。


 今は、とってもウキウキと楽しそうに。

 少し俯き加減で、何を見ながらしゃべっているんだろうっていう感じ。

 まるで、そこにバーバパパがいるような。


 オタクっぽくもなく。

 どちらかというと不思議ちゃんのような、ゆっくりとした口調で長台詞を言って。

 一人で納得していたし。


 ちょっと怖く感じちゃうよ。


「私の家ね、バーバパパの絵本が全種類あるの」

「へ、へぇ……。そうなんだ」


 地雷系とはまた違った、怖さがあるような。

 バーバパパガール。

 バーバパパ女子?


 私は、そんな子と初めて会ったな。

 千恵ちゃんって、顔も整っていて、お人形さんみたいで可愛い女の子。

 男子の中には、千恵ちゃんの隠れファンも多いって聞くけれども。

 そんなにバーバパパが好きだったなんて。

 ちょっと、知らない方が良かったかもって思っちゃうな。


 今後のために、それとなく探りを入れながら、聞いてみようかな。


「私も、ムーミンとかなら知っているよ。バーバパパって、そんなに良いの?」


 私は、その言葉を言ってしまってから、失敗したって思った。

 特定の物が好きな子に対して、その物の良さを聞いてしまうというのは禁句だ。

 聞いてしまったが最後。

 絶対に話が止まらない……。


 千恵ちゃんの目が光った気がした。


「じゃあ説明するね。バーバパパっていうのは、パパとママがいて。その子供が七人いるんだよ。色は虹色を意識しているけれども、藍色の代わりに黒色が入っているの。それで七兄弟でね。あとはパパとママ。パパはピンク色で、ママが黒色ね。私が好きなのはもちろんバーバパパなんだよね。それでね……」

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