ライフハック

 四月はたまに雨が降る。

 春雨って私の中では呼んでいるけれども。

 菜種梅雨なだねづゆって呼んだりするらしいの。


 確かに雨が多いから、梅雨なんだなーって、この年になって感心しちゃうな。


 雨が多い季節って、ちょっと気分沈んじゃうなーと窓を眺めていると、隣の席の真弓まゆみが投稿してきた。


 雨の中登校してきたっていうのに、全然濡れていなかった。


「真弓、おはよう。雨降ってるけど、全然濡れてないんだね?」

「もちろん、私はシューズカバーっていうのをつけてるんですよ」


 真弓は得意気に言うけれども、私にはさっぱり分からなかった。


「何それ?」

「靴に着けるレインコートみたいなやつでね。ゴム手袋みたいに、水を通さないんだよ」


「へぇ、そんな便利そうなものがあるんだね」

「最近見つけたんだー!」


 真弓は、いつも何かしらのライフハックを見つけては、私に教えてくれる。


「そうだそうだ、真希まき、これ見て!」


 真弓は、小さなガジェットを手に興奮気味に話し始めた。


「これ、最新のやつなんだけどね。スマホの充電を超速でできるようにするやつなんだよ。充電切れそうになったら、私に言ってね!」


 彼女の最近のブームで何か便利なものとかを紹介してくるの。

 楽しいから、ついつい聞いちゃう。

 真弓は話を続けた。


「それとね、これからの季節にぴったりのライフハックがあるの。これ、冷蔵庫で冷やしたスプーンを使って、朝の腫れぼったい目を冷やすの。すごくいいんだよ。メイクする前とかに最適だよ」

「へえ、それは便利そう!」


 私の反応に、真弓は笑顔でうなずき、もう一つのライフハックを教えてくれた。


「あと、この季節、靴の臭いとか気になるじゃないですか? そういう時は、お茶の葉を入れた靴下を靴の中に入れておくといいんだって。登下校の時以外は、入れとくといいよ。私の一個上げるね」

「ありがとう!」


 私は真弓のアイデアにいつも助けられている。

 真弓はさらに話してくる。


「あとね、バナナの皮で靴を磨くとピカピカになるんだよ。新しい革靴なのに、泥に汚れちゃうじゃん、この雨って」


 色んな所からなんでも出てくる。

 真弓のライフハックは、時々聞いたことあるようなありきたりなものもあるけど。

 でも、結衣はそれでもめげずに、新しいアイデアを次々と試して、教えてくれる。


「真弓ー、そのライフハック、ちょっと古いんじゃない……?」


 他のクラスメイトがそう言っても、真弓は気にしていない様子だ。


「でも、私はまだ試したことないもん! やってみる価値はあるよ!」


 そうやって明るく答える真弓。

 そういう探求する精神って、私はとっても良いと思うな。


「へへへ。私、ライフハックが好きだからさ。皆の生活を便利にしたいんだ!」

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