恐竜

 春の風が教室の窓を優しく揺らす。


 土の匂いって言うのかな?

 春の匂いが教室の中まで入ってくるようだった。


 四月の新学期、私たちは高校二年生になった。

 新学期も落ち着いてきた頃に、クラスメイトの間で話題になるのは、進路のこと。

 もう、そんなに先のことを考え始めるのかって、私は思ってしまうけれども。

 どの教科を重点的に勉強しようっていうこともあるからね。


 みんなは、どの大学が良いかって話している。

 関東に住んでるから関東の大学を答えるのが必然。

 その中で、公立なのか、私立なのかとか。

 それか、どんな学科が良いかーとかを話している。

 ちゃんと将来を考えてるんだなって感じてしまう。


 そんな中で、幼なじみの遥斗はるとは、もっとしっかり将来を考えているようだった。

 小さい頃から恐竜が大好きだった遥斗は、福井県立大学の恐竜学部に行きたいと言い出したのだ。


「え、何その学部? それって、遥斗の妄想? 本当に恐竜学部なんてあるの?」


 私は疑問を投げかけた。

 すると、遥斗は目を輝かせて答えた。


「うん、2025年に開設されるんだ。まだ仮称なんだけどね。福井県立大学には恐竜・地質学科があって、恐竜や地質、古気候学について学べるんだよ」

「へえ、すごいなぁ……。そういう所まで、ちゃんと調べてるんだね。でも、なんで福井にあるの? というか、遠くない……?」


 遥斗は笑って答えた。


「福井県は日本で最も多くの恐竜化石が見つかる場所なんだ。特に福井県勝山市というところでは、恐竜が生きていた頃の地層が多く残っていて、発掘された化石は日本の恐竜研究をリードしているんだよ」


 恐竜オタクらしくもなく。

 どちらかと言うと、学者さんのように優しく語る遥斗。


 遥斗はいつも情熱的で、恐竜について調べ始めると徹底的に調べてたんだよね。

 分からないことがあると、恐竜博物館の学芸員さんを質問攻めにして困らせてたんだ。

 インターネットを使って、外国の恐竜研究者に質問してたり。

 新発見があると、親を説得して現地まで行ってみたりしてた。


 そんな遥斗が夢に向かってる。

 私も遥斗の夢を応援したいな。


「遥斗なら絶対にそこがいいよ! 福井で恐竜について学んで、素晴らしい研究者になってよ!」


 遥斗は嬉しそうに頷いた。


「ありがとう、翔子しょうこの応援があれば、きっと夢を叶えられる気がするよ」


 一方で私は、まだ全然先のこと考えられてないな。

 遥斗を見習わないと。


 好きなことを見つけて。

 それに向かって頑張ろう。


「そういえば、遥斗はなんで恐竜が好きになったの?」


 照れながら遥斗は言った。


「翔子が恐竜好きだって言ってたのが、きっかけだよ。詳しくなって、話したいなって思ってたら、僕の方が好きになってたんだよね。はは」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る