決闘

 私は普通の女子高生だけど、『決闘』っていうものが好きなんだ。

『決闘』って言っても、昔ながらの剣や銃を使って、命を懸けて戦うような『決闘』じゃないの。


 私の学校での『決闘』とは、スポーツでの勝負のことを指す。

 なにかの権利を賭けて、スポーツで戦うことを『決闘』って言うんだ。


 その勝負が熱いのなんのって。

 私にとっては、テレビやってるスポーツの試合のどれよりも熱く感じるの。



『決闘』に、男子とか女子の区別はないけれども、男子が決闘する所を見ると、私はワクワクしちゃうんだ。

 真剣に競い合う男子って、とってもカッコイイの。



 今日もまた、その時が来た。

 今日の決闘は、バスケ部とバレーボール部が体育館の使用権をかけて、戦うらしい。


 勝負場所に選ばれたグラウンドで、両方の部長が対峙している。


「今週分の体育館は、俺たちがもらうからな」

「いやいや、今度も僕たちが勝ちますよ?」


 今日の勝負はリレーらしい。

 決闘委員会が、ルール説明を始めた。


 決闘は、決闘委員会が仕切ることになっている。

 勝負の内容を決めたり、勝負の審判をしたりするのが、決闘委員会。

 それも、カッコイイって思うんだ。


 決闘に関わる人、みんなみんなカッコイイ。

 自分たちの部活や、委員会にプライドを持って決闘に臨む姿勢。

 それがカッコイイの。


 私はと言うと。

 帰宅部だから、ただの見物人なんだよね。はは……。

 新聞部にでも入ったら、とてもあっていたのかもしれないなって今更になって思うけどね。

 毎回、毎日欠かさずに決闘を見に来てて。

 私よりも決闘好きな人はいないかもしれない。




 桜の花びらが舞う中、私はグラウンドの端からリレーが始まるのを眺める。

 春の訪れを告げるような爽やかな風が吹き抜けた。


 リレーの一番手の人が、それぞれスタートポジションへと着く。彼らの目は真剣そのもので、勝利への意志が伝わってきた。


「それでは、始めます。位置について、よーい……」



 始まりの瞬間。

 一番緊張するところ。

 コレがたまらなく好き。


 ――パンッ!



 リレー開始のピストルが鳴らされた。


 彼らの足音が鳴る度に、胸の鼓動が高鳴る。

 バトンが次々と手渡される度に、心臓も跳ねる。


「……よし、行け!」


 私は声にならない声援を送った。

 彼らは、私の期待を裏切らない。

 いつも熱い勝負を繰り広げてくれる。


 今日の決闘も良い勝負をしていて、最後のアンカーはほぼ同じタイミングでゴールした。


 どっちが勝ったのか、私のところからは見えなかった。

 けど、どちらが勝ったとしても、決闘での勝負は美しい。


 結構って、やっぱりいいな……。

 私好きだなぁ……。

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