街のベーカリー

 新しい朝が来た。

 すっきりとした気持ちで起きれる良い朝だ。


 私は目を覚ますと、すぐに立ち上がりカーテンを開ける。


 ――ザザーー!


 窓から差し込む日の光。

 朝の日差しを浴びるのが好きなんだ。


 そして……。


 私は、窓も開ける。

 朝の清々しい風と共に、漂ってくるのは、小麦とバターの香ばしい匂い。


 うーん。良い匂い。



 この街に新しくできたベーカリーからのものだ。

 私はこの匂いを嗅ぐことが、朝の日課になっている。

 とっても美味しそうな匂いをしているんだ。

 休日であれば、私はその店に行ってパンを買ってくる。



「よし! 今日も行こう!」


 そう思い立ったので、急いで着替えてベーカリーへと向かった。



 ◇


 私の家の目と鼻の先に、その店はある。


 カフェトベーカリー。

 屋根にオシャレな字体をした看板を付けたお店。


 お店の前に立てかけてある看板に、今日のイチオシのパンの情報が載ってる。

 今日のイチオシは、クロワッサン。


 ふふ。私の大好物だ。



 このお店の外観だけでも、乙女心をくすぐるんだ。

 けど、店内も良いの。


 店内に一歩足を踏み入れると、そこはまるで別世界。

 まずは、入る時に香る焼きたてのパンの匂い。

 家で感じたのは、比べ物にならないくらい。

 食欲を掻き立てるパンの匂いって、私はこの店で初めて嗅いだの。



 その匂いの中に入っていくと、今度は目で楽しませてくれる。

 棚には色とりどりのパンが並び、そのどれもが私を誘うように見える。


 小さい頃、祖母と一緒に焼いたパンのことを思い出すなぁ。

 あの時の温もりと、幸せな気持ち。

 それが今、このベーカリーの中にも満ちている。


 今日の焼きたてパンを、端から順番に眺める。

 クロワッサンが第一候補だけれども、他にも良いパンがあれば買いたいな。


 私が棚を見ていると、店員さんから優しい声が聞こえてくる。


「おはようございます。新しいパンが出来ましたよ」


 声だけじゃなくて、顔も優しそうなパン屋のおばちゃん。

 この雰囲気。祖母を思い出すんだよなぁ。


 店員さんは、私の存在に気付いたようで、私にだけ話しかけてくれた。


「あら、いらっしゃい。今日はね、クロワッサンがオススメですよ。外はサクサク、中はふわふわのクロワッサン。一口食べると、バターの風味が口いっぱいに広がるよー」


 そう言って、クロワッサンを棚に並べてくれる。

 店員さんが持ってきたクロワッサン。

 まだ食べていないというのに、ヨダレが出そう。


「ここのクロワッサン。すごく美味しいですよね!」

「ふふ、ありがとうね」


 優しく笑う店員さん。


 やっぱり、私はこのベーカリーが好きだな。

 私の家の前に出来た、街のベーカリー。

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