メンズファッション

 渋谷にある忠犬 ハチ公の前で待ち合わせ。

 今日は、すごいオシャレしてきたんだよ。

 一部の人には、地雷系なんて呼ばれそうだけれども……。


 け、けどね。

 じ、地雷系なんかじゃないからね。

 中身は、普通の田舎にいる女子高生なんだよ。


 渋谷って怖いって思ってね。

 ちょっとでもオシャレしようって盛っていったら、結果こうなったの。


 可愛い恰好しようって思うと、フリフリな服を選ぼうとするじゃん。

 それで、春色だから、ピンクは入れるじゃん。

 一色じゃオシャレ感が弱いから、それに合うようにって思って。


 可愛いだけの色で統一すると、弱弱しく見えて、変なやつに絡まれるかもなって思って。


 それで、強そう色を入れようと思って黒を取り入れてね。

 それで、可愛さが物足りないなーって、リボンをいっぱいつけていったら出来上がり。


 鏡で見てびっくりしたもん。

 これ、地雷系の格好だ……って。

 ははは。


 ツインテールなのは、私のいつもの髪型なわけなんだけれども。

 うん、我ながら、めっちゃ地雷系……。


 まずったな……。

 今から行っても、しょうがないか……。


 春休みにちょっと渋谷まで行こうって。

 そんなリスキーなことするのって、美晴はどうかしているよ。

 もう……。


 早く来ないかな。


 スマホをつけると、待ち合わせ時間の5分前だった。

 電車乗り継いでくるから、余裕をもって来たんだよ。

 あと、乗り換えもちゃんと調べてたし。

 そしたら、上手く乗り継いじゃって早く着いちゃった。


 はぁ……。

 一人不安だな……。



 渋谷って、人がいっぱいだよね……。

 特に、若い人がいっぱい。

 オシャレな人がいっぱい。


 そんな人が多い中で、

 人の波に酔うってよく言ったものだよね。

 確かにこれは、なんだか気持ちが悪くなりそう……。

 うぅ……。

 早く来ても美晴……。



 暖かいからか、肌を露出した薄着の人も多いし。

 そこのお姉さん、そんなにお腹見せちゃダメでしょー……。

 肩だけ見せている人もいるし。

 見せブラなのかもだけど、あれは、ダメだよ……。


 そんな人ばかり。

 怖い……。


 男の人も、イケイケな人が多く見えちゃう。

 所かまわずナンパする人もいるっていうし。

 絶対話しかけられたくない……。


 そう思っていたら、ふらふらしていた男の人と目が合ってしまった。

 目が合った瞬間その人が笑ったように見えた。


 まずい……。

 目が合っちゃったじゃん。


 目を伏せながら足元も見ると、段々こちらに近づいてきている。


 やだやだー……。


「キミ、可愛いね?」


 うぅ……。

 絶対に無視……。


「はは、早紀さきー? 無視しないでよー。私だよ私、美晴だよ!」

「え?」


 イケイケな恰好で、だぼだぼなズボンに、白いシャツ。

 上からジャケットを羽織って。

 イケメン眼鏡。


 男の人って勘違いしちゃったけど、そこにいたのは美晴だった。


「え、いや、どうしたのその恰好!」

「ふふ。どう、カッコいいでしょ?」


 春のオシャレ。

 私も地雷系でいつもと違ったけれども、美晴もいつもと全然違った。


「こういう格好も良いでしょ? 早紀も同じ気分でしょ? 春はオシャレに決めたいよね! 私メンズファッション好きなんだ!」

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