お気に入り
じゃじゃーん。
これは、私のお気に入りなんだ。
紫色のキャップを、頭の奥まで深くかぶる。
ボーイッシュなイメージがするキャップなんだよ。
私に似合うよね。
後ろの方はメッシュになっていて、通気性も抜群。
帽子の中も蒸れなくて、気持ちが良いんだ。
路上駐車されている車の窓ガラスを見ると、私の楽しそうな顔が見える。
それを見ると、なんだかもっと楽しい気分になる。
これって、いいでしょー。
私のお気に入りなんだよ。
そうやって人にも言いたくなっちゃう。
春の陽気が心地よく、私はお気に入りの帽子をかぶって街を歩いていた。
気分が良いと、くるって回りたくなる。
春は、花々が咲き誇り、風は心地よく頬を撫でていく。
天気は最高で、私は好きな人にも会える予感がしていた。
「その帽子、カッコいいね」
突然声が聞こえた。
後ろを振り返ると、
三瀬君はいつも優しい笑顔を浮かべている人で、私のお気に入りの人。
学校で見る制服じゃない私服の三瀬君。
春らしい、白いシャツが三瀬君の爽やかさを際立たせている。
ブルーのジーンズ。
シンプルなのに、様になるってすごいよね。
「この帽子のこと褒めてくれたの? ありがとう!」
「すげー似合うじゃん。
「へへへ。それにしても、偶然だね? こんなところでどうしたの?」
「ん? 俺は、買い物だよ。新学期の準備ってやつ」
いつも通りの、優しい笑顔。
こういうところが、三瀬君の良い感じのところ。
「へぇ。いいじゃん! 一緒に見て回る? 私も準備しなきゃだし」
「いいよ! 買い忘れないようにしようぜ」
三瀬君は、男女とか、そういうのを気にせず話してくれる。
そういうところ良いよね。
私は、三瀬君と一緒に買い物をして回った。
文房具屋さんでペンを買ったり、ノートを買ったり。
ちょっと服屋さんに行って、春物の服を見てみたり。
ちょっとゲーセンに行って、二人で音ゲーをしてみたり。
◇
「ふぅ。なんだか、いっぱい遊んじゃったね」
「ははは、買い物以外もいっぱいしちゃったな」
春って爽やか。
何をするにも気分が良い。
「まだ、やっていないことがあるよ」
「なんだっけ? 買い物も、遊びも大体やったと思うけれども」
私は、キャップを指して言う。
「私さ、こういう日には、バッティングセンターで打ちたくなっちゃうんだよね」
「ふー。真木さん、アクティブだね。いいよ付き合うよ!」
やりたいことを、いっぱいやって過ごす春休み。
それの、全部がお気に入り。
「お気に入りって良いよね。最高に楽しい気分になるよ。私のお気に入り! 好きだよ」
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