三葉

 うちの高校の校庭の隅には、少し原っぱがある。

 そこには三つ葉畑が広がっている。


 綺麗にいっぱいあるんだ。

 私はそこで、四つ葉のクローバーを探していた。


 終業式が終わったあと。

 そこから部活がある人もいる。

 せっかく、この学年最後の日だからって、友達の部活が終わったら遊びに行こうって言ってたんだ。

 私は、特に部活に入っていないから、ここで時間を潰して待ってるようなところです。



 その合間に四つ葉のクローバー探し。

 見つかったら、願い事をしたいっていう気持ちはあるけどね。

 来年も、好きな人と同じクラスになりたかったから。

 おまじないの意味も込めて、四葉のクローバーを探している。

 でも、中々見つからない。



 彼はサッカー部なんだ。

 校庭でボールを追いかけている姿は、まるで清涼な風のよう。

 カッコイイんだよなー……。

 なかなか声なんて掛けられないけれども、せめて一緒のクラスになれたらなぁ。



 ◇



 友達を待ってる間、ずいぶん探したけれども、四葉のクローバーはどこにも見当たらない。

 友達も全然来ないし。


 ちょこちょこ見ていた、サッカー部の活動も終わったみたいだし。

 友達の方が遅いなんてなぁ……。


 ふと彼の方を見ると、彼と目が合った。

 彼は、汗を拭きながらこちらに歩いてくる。


 あれ。どうしよう……。


 彼は私の目の前まで来ると、聞いてきた。


「何をしているの?」


「四葉のクローバーを探しているんです。幸せを呼ぶおまじないをしようかなって……」



 私が答えると、彼は微笑みを返してくれた。


「それなら、一緒に探そうか?」

「そ、そんな。大丈夫です。半分は暇つぶしだし……」


 彼は不思議がっていた。


「二人で探した方が早く見つかるって」

「……そうだけども」


 しゃがんで探している私のすぐ隣にきて、探し始めた。

 遠くで見てるだけだったのに、こんなに近いと緊張しちゃうよ……。


 さっきまで散々探して見つからなかったから、すぐに見つかる訳もなく。

 暫く二人で探していた。



「中々無いものだね?」

「そうなんですよね。全然見つからないんですよ」


「そういえば、七尾ななおさんって、英語得意だったよね。今度教えてよ!」

「え、うん。良いけど」


「よっしゃー! ‌俺英語かなり点数悪くてさ、新学年では頑張りたいんだよね!」

「うん」


「七尾さんはさ、いつもどうやって勉強してる?」


 なんだか、なにかに熱中している時って、会話が弾むかも。



「そういばこの前さ……」

「うんうん」


 私達は、二人で話しながら、四つ葉のクローバーを探した。

 けど、やっぱり全然見つからない。

 むしろその方が、良いのかもしれない。

 友達の部活も、まだ終わらないで欲しいな。


「また三葉だー」


 そう言って悔しがる彼。


 けど、三葉って良いよね。

 四葉が中々見つからないように隠してくれているところが好きだな。

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