さくら
春にだけ咲く花。
桜って綺麗だよね。
風に吹かれて、桜の花が空にふわふわと舞っている。
ピンクというよりも、白に近い色。
空に浮かぶ雲が形を変えて降りて来たみたい。
桜の花びらは、ふわふわと川に降りていく。
桜を見てるだけで、心が安らぐなー……。
今日は晴れていたので、河川敷を一人で歩いていた。
春休みっていうのは、太りやすい時期だからね。
お団子は美味しいし。
一人でお散歩しながら花見を楽しんでいたら、前から見たことある顔が歩いてきた。
奈々もこちらを見つけたようで、手を振りながらこちらへと寄ってきた。
「やっぱり、
「奈々ちゃんも、奇遇だね。お花見しているの?」
私がそう言うと、奈々ちゃんは手に持っていたエコバックを見せてくれた。
中には本が入っている。
「私は、図書館に行ってきた帰りだよ。春休みにいっぱい本読みたいなって思ってね」
笑う奈々ちゃんは、いつも通り可愛い。
花より団子っていうけども。
それよりも、読書なんだね。
奈々ちゃんらしいな。
「咲良ちゃんは、どうしたの?」
「私は、お花見しながらお散歩だよ。気付いたらお団子ばかり食べちゃううから、お散歩してるんだ」
「ほえー……? 咲良ちゃん、なんだか優雅な感じだね。ダイエットするために花を見て歩くなんて」
「そう思う?」
「「はははははっ」」
私たちは、変なところで気が合うからね。
私たちは二人で声を揃えて笑いあっていた。
笑いあって一息つくと、奈々ちゃんが誘ってくれる。
「せっかくだから、二人でお花見しよう?」
「奈々ちゃんが良いなら、良いよ。一緒に歩こう」
私と奈々ちゃんは、頷きあった。
そして、河川敷を二人で歩く。
桜の花びらがひらひらと、舞う中で。
ゆっくりと歩く。
私と奈々ちゃんは、雲の中を歩いてみるみたい。
そんな浮遊感があった。
流れている川は、桜の花びらが積もってきていて、流れる雲の川みたい。
遠くの方まで続く桜並木。
桃源郷っていうところがあったら、こういう感じなのかもしれないな。
夢の中にいるような。
なんだか、幸せな気分。
奈々ちゃんの顔も、どこか赤くなっているような。
周りが白いから、余計に目立つ。
奈々ちゃんは口を開いた。
「私さ、春休み中にやりたいことがあるんだ」
「そうなんだ? 何がしたいの?」
今度は、はっきりと分かった。
奈々ちゃんは、二つの頬を赤くして。
サクランボみたいな頬っぺた。
「えっとね、私ね……。ちょっと春休み中に小説を書いてみたいんだ……」
「えぇ! すごい!」
奈々ちゃんは、素早く首を横に振る。
「すごいことなんてないよ、まだ何も書けてないし」
恥ずかしがる奈々ちゃん。
「大丈夫だよ。奈々ちゃんなら書けるよ。書けたら私にも読ませてね!」
「……うん!」
桜の花が舞う中の、夢を見ているみたいお話。
桜が綺麗だなって思った。
そんな中で奈々ちゃんの呟くような声が聞こえた。
「さくらって、やっぱりいいね。私好きだな……」
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