ホットサンド

 春の例大祭。

 桜も咲く季節。

 だけど、夜になるとやはり肌寒い。


 私は友達の櫻子さくらこと地元の祭りに来ていた。

 今年は、まだ花散らしの雨は降っていないから夜に咲く桜も見れた。


 屋台の淡いオレンジ色の灯りが神社の中を温かく照らしている。

 その灯りにライトアップされた桜って、とても綺麗なんだよね。

 私は、この時間帯に見る桜が好きなんだよね。


 そんな桜を眺めながら、櫻子と境内を歩く。

 祭りの賑やかな雰囲気と、屋台のいい匂いに心を躍らせながら。

 二人で、手を繋いで歩く。



 明るい笑顔で、櫻子が言う。


「わぁ、たこ焼きも焼きそばもあるよ! ‌どれにしようかな?」


 櫻子は目を輝かせている。

 どれも美味しそうだな。


 まぁ、やっぱり、花より団子だよね。

 ははは……。



 櫻子が何かを見つけたみたいで、驚いた様子で言ってくる。


「ちょっと待って、あそこの屋台、何か変わったもの売ってるよ!」


 そう言って、櫻子は指を差した。

 その方向を見ると、そこには「世界のホットサンド」と書かれた屋台があった。


 櫻子は興味津々で私の手を引っ張る。

 私も気になるので、近づいていく。


 屋台は、あまり見ないようなオシャレな雰囲気をしていた。

 どこかオシャレカフェみたいな雰囲気。


 メニューの写真もオシャレだった。

 ハムエッグや、たまごチーズサンド。

 タルタルサンドなんて言うのもある。


 ありきたりなメニューかもしれないけれども、サンドイッチの断面を載せた写真はこのままSNSに載せても良いくらい。


「ホットサンドって、こんなに色々な種類があるんだね!」


 櫻子は感心しながら、メニューを眺めている。


「私は、メキシカンスタイルのホットサンドにしようかな。アボカドとチリビーンズが入ってるって!」


 おぉ、なかなか美味しそう。

 屋台のお兄さんは私たちの話を聞いていたのか笑顔で言ってくる。


「それは、美味しいよ!」


「そうですよね。絶対美味しそうです。私それ一個お願いします!」


 櫻子は楽しそうに注文した。

 私も乗り遅れないように、言う。


「私も、同じやつ下さい!」


「かしこまりました。ちょっと待っててね!」



 櫻子は、ウキウキしながら待っていた。

 私も同じ気分。



 ◇



 待つこと数分、出来上がったホットサンドを渡された。


「美味しそう!」


 早速私と櫻子は食べ始める。


 外はカリカリ、中はとろ〜り。

 一口食べると、スパイシーなチリビーンズとクリーミーなアボカドの絶妙なハーモニーが口の中で広がる。


「これは……すごく美味しい!」


 櫻子は目を輝かせて言った。


 私も同じことを思った。

 ニコニコと二人で笑い合う。



 祭りの夜が更けていく中。

 屋台が並ぶ道を二人で歩きながら、ホットサンドを食べる。


「ホットサンドの屋台なんて初めて見たけれども、とっても美味しいね。私も、もっと色々なホットサンドを食べてみたいな。ホットサンド好きになったかも!」

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