ホワイトデー
春のテーマパークは、学生さんでいっぱい。
女の子同士も多いけれども、男女のグループもいれば、カップルだっている。
カップルは、二人で手を繋いだり。
カップルは、恥ずかしそうに笑いあったり。
カップルは、お互いに見つめあって、顔を近づけ……。
私は目をつぶった。
私は今、何も見てないし。
それに対して、何も感じていない。
ただ思うこととしては。
とても、とても、羨ましい……。
私が一緒に来た人達を見ると、自分が負け組であることを自覚してしまう。
バレンタインデーのあの時に、告白成功していれば、私の隣にいたのは憧れの先輩だったのに……。
よりによって……。
なんでこいつと一緒なんだ……。
いがぐり頭のやつが、私の隣で笑っている。
私の相手は、こいつだ。
静香と静香の彼氏が知っている、共通の友人を連れていこうとなったら、こうなっちゃったんだよね。
私の隣にいるこいつは、ずっと呑気に笑ってる。
私はバレンタインデーに、先輩にきっぱり断られて、チョコを受け取ってさえくれなかったんだ。
その時、やけくそになって、こいつに横流ししたんだ。
ちゃんと、正直に言ったうえで、あげたんだよ。
「このチョコは、先輩に渡すはずだったけど断られた」って。
こいつは、それを知った上で、美味しそうに食べてくれた。
その時は、少し嬉しかったりもしたんだけどさ。
嬉しかったのは、その時だけ。
野球部なのは、良いけども。
野球のキャップは、このテーマパークには持ってきて欲しくないし……。
ファッションセンスとか、顔とか……。
私の求めるものじゃないんだよな……。
ジト目で、野球のキャップを睨んでると、静香の彼氏が何かを見つけたようだった。
「おぉ! あれ良さそうじゃん! じゃあ、今度はあれに乗ろうぜ!」
「いいね! じゃあ、私たち乗ってくるからさ、後で待ち合わせしようね!」
静香と彼氏は、二人でどこかへ行ってしまった。
残された、私とこいつ。
「あぁ、行っちまったなぁ。これから、どうする?」
優柔不断な所も、好きじゃないし。
もっと、リードしろってのよ。
……もしも、私に気があるならだけどさ。
「うーん。俺らは違うの乗るか?」
悪い奴じゃないけど、やっぱり彼氏には無理かな。
何にも魅力を感じないし。
「そうだ! ここのパレード、40周年らしいから、少し見ようぜ!」
「えっ? そうなんだ?……それは、見たいかも」
私が興味を持ったのを悟って、こいつも乗り気になった。
「俺、どこが見やすいか知ってるんだ。ちょっとそこまで行こうぜ!」
「……う、うん」
私の方を振り向いて、手を出してきた。
「ハグれないようにしないとな!」
「……お、おう」
なんだか、やるせないんだけれども。
まぁ、今日だけはいっか……。
なんか、こいつ。
少し、身長伸びたんだな……。
「後で、ホワイトデー代わりになにかスイーツ食おうぜ! 俺いいの知ってるからさ!」
こいつは、人には見せないだけで、意外と努力して調べてたりするのかもしれない……。
初めて来るって言ってたのに、そんな知るわけ無いし……。
努力は認めてあげようかな。
「じゃあ、ホワイトデーだから、奢られてやるよ。良いスイーツを食べさせてね!……毎日がホワイトデーでも良いくらい、好きにさせてよね!」
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