ミントガム

 試験勉強も真っ只中。

 高校二年生の期末テストへ向けて、勉強をする。


 そんな私は、ミントの香りがするものが大好きなんだ。

 机の引き出しには、いつもミントガムやミントのキャンディを欠かさず入れてるし。

 勉強中の小休憩には、それを口に入れてスッキリした気分になる。

 私には、欠かせないアイテムだ。


「ミントって、頭スッキリするから好きなんだよなぁー」


 一人でつぶやきながら、一粒のミントガムを口に放り込む。

 その清涼感が頭を駆け巡り、集中力が増すのを感じた。


「良し! ‌もう少し頑張ろう!」


 隣の席の陽斗はるとは、私がミントガムを噛み始めるとろこを見ていた。

 私は、チラッと見たけど、ミントのスッキリさが消える前に少しでも勉強を進めておきたかったから、気付かないふりをしていた。


 陽斗は甘いものが苦手らしい。

 特にミントの強い刺激は避けているらしいから、少し香りをさせてしまったのかもしれない。

 申し訳ないけど、そこまでは考慮しきれないかな。

 ミントのものなんて、みんな食べるし……。


 そう思ってると、陽斗が話しかけてきた。


「ねえ、美月みつきさん。それってどんな味?」


 別に匂いが嫌だという訳ではなさそう。

 すごく純粋に気になるといった顔をしていた。


 私は笑顔を浮かべて、ガムを一粒を差し出した。


「試してみる?」


 陽斗は躊躇しながらも受け取り、口に入れる。

 すると、予想外の清涼感が口に広がったのか、口と目を見開いた。


「これは……、すごいね。スッキリする」


 私は嬉しくなって、頷いた。


「でしょ? ‌勉強の合間には、ミントガム最高だよ」


 その後は陽斗も勉強に集中できていたようで、特に話しかけてこなくなった。

 ミントガムの味が無くなる辺りで、一声かけてきた。


「美月さん、さっきのガム。すごいの良かったよ、なんか勉強が捗った」

「だよね! 今味無くなったとこでしょ? ‌もう一個あげるよ。ほらっ」


 私は陽斗とミントガムを分け合いながら勉強を続けた。

 陽斗はミントのおかげで、いつもよりも長く集中できている気がする。

 いつもは、放課後すぐ帰っちゃうのに。



「ミントガムってスッキリするから良いね。こんなものがあるなら早く知りたかったよ!」

「でしょ? ‌ずっと進めてたじゃん、私」


「そうだったっけ? ‌なんか、『キスをする前にはやっぱりコレが必要だよ』みたいに言ってたから、俺には無縁だなって思ってたんだよ」

「……え? ‌私そんなこと言ってた? キスなんて誰ともした事ないのに」


 陽斗は、ガムを口に入れた。

 笑顔でこちらを向いてくる。



 キスの話なんてしてたっけな……。

 ミントの香りがするようなキスならしてもいいかもだけれども……。



「じゃあ、しよう!」

「えっ? ‌なになに急に……心の準備ってものが……」


 陽斗はノートに目を落として、勉強に戻った。


「ミントガムが効いてるから、今が勉強のチャンスだね!」


 あぁ、勉強をしようってことね……。

 紛らわしい……。


「私のミントガムをあげたんだから、ちゃんと頑張りなよ。私の一番のお気に入りなんだからね。これが一番好きなんだ」

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