ボーカロイド

 誕生日プレゼントは袋に入っていた。

 そこから取り出した瞬間、私は叫んだ。


「やったーーー!!」


 すごく嬉しかったの!!

 私がずっと欲しかったものを、誕生日プレゼントとしてもらったの!


 ついにだよ!

 ついに手に入れたんだよ!

 ボーカロイド!!



 誕生日に、お母さんがプレゼントしてくれた。

「プレゼントだよ」ってもらえた時、形や大きさからして、何か箱に入ってるものだなぁくらいに思ったけれども。

 それが、PCソフトだとは夢にも思わなかった。


 憧れのボーカロイド……。



 あぁ。やったよ……。

 これで私も、憧れていた作曲ができるんだ!

 私だけの歌を作れるんだ!


 お母さんは、喜んでいる私に言ってくる。


「大切に使うのよ? ‌せっかく買ってあげたんだから、すぐに飽きちゃダメだよ?」

「大丈夫! ‌これで何曲も作っちゃうんだから!」


 私はお母さんにそう言うと、すぐにパソコンにインストールを始めた。



 ◇



 インストールが終わって、早速起動してみたけれども、作曲って難しい。

 私は、どこから手をつけていいのかわからなかった。

 音楽の知識なんてほとんどないし、楽譜の読み方も、ちんぷんかんぷん……。


 でも、諦めたくない。

 だって、これが私の夢だったんだもの。


 大丈夫、一歩ずつでもいいんだよ。

 心の中で自分に言い聞かせる。



 まずはネットで調べたりしてやってみよう。

 それなら得意だし。

 それでもダメなら、友達に聞いたりしながら、少しずつでも前に進もう。


 私は、色々とボーカロイドをいじり始めた。


 メロディーはどうしようかな?

 歌詞とかも、自分で作るんだよね?

 コードってなんだろう……?



 こんなに悩むなんて思わなかったけど、調べるのも、それ自体がまた楽しかった。

 自分だけの歌が、少しずつ形になっていくんだもの。

 私は毎日徹夜して、作っていった。



 そして数日後、ついに完成した一曲。


 初めての作曲だけど、私の気持ちが詰まった歌。

 早速、友達に聴かせようと思って、音楽を動画投稿サイトにアップロードした。

 そして、そのURLを友達に送る。


 どうだろうな?

 初めてにしては、結構上手く出来たと思うんだけれども……。


 友達からの連絡を待っていると、すぐに「すごいね!」って返事が返ってきた。

 頑張って毎日作っていたから、その友達の言葉が、どれだけ嬉しかったか。


 動画サイトの、アクセス数は友達が見てくれた証として、一つ数字が増えていた。


 私はすぐに返事をした。


「ありがとう! ‌私の初作曲を初視聴してくれたんだよ!」‌


 後にも先にも、一回だけなんだから。

 この時、すごく嬉しい気持ちになった。


 その後、自分で何回も再生させていたから、数字の増え方がどうなるかは、見てなかったけれども。


 ボーカロイドで作曲するって楽しい。

 私、やっぱりボーカロイドが好き。

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