サウナ

 私と篠宮しのみやさんは、プールリゾートに来ている。


 ここには、ウォータースライダーがあったり、色々な種類のプールで楽しめるのと同時に、水着でお風呂に入れたりするんだ。


 変わったお風呂もいっぱいでね。

 ドクターフィッシュっていう、足の角質を食べてくれるような魚がいるお風呂もあったり。

 お金持ちな人がやるような、ワイン風呂なんていうのも体験ができるんだ。


 ……さすがに、未成年は無理だけれども。



 篠宮さんは、ワイン風呂を横目に言うのだった。


「私の家では、これと同じことを、よくやっていますわ」


 篠宮さん、それって漫画の中の世界だよ……。

 金髪の縦巻きロール髪をしてそうな、お嬢様の発言ですわよ……。


 私は心の中で、そんなつぶやきをしながら、口からは「さすが、篠宮さん」って言葉を出していた。

 篠宮さんは、まんざらでもない様子で、うんうんと頷くのであった。



 篠宮さんはお金持ちだけれども、世間知らずだからあまり友達がいないんだよね。

 なんでか、私に懐いているみたいだけれども。


浅香あさかさん、あそこにあるのは何かしら?」


 篠宮さんは、サウナ室の方向を指さして私に聞いてくる。

 多分サウナを知らないのだろう。


「なぜだか、汗をダラダラ流して、疲弊した人たちが出てくるのですけれども。何かの労働部屋かしら?」


「うーん、そうだよね、初めてみたらそう見えるよね。あそこはサウナっていうんだ」



「何かしら、それ? ‌新しい拷問か何か?」


「うんー? ‌半分だけあっているような、間違っているような?」



 篠宮さんは、本当に何もわかっていないから、楽しいといえばそうだけれども、説明が難しいんだよね。


「私、あそこに入ってみたいですわ」


 そういって、篠宮さんは早歩きでサウナへと向かった。


「わかった、わかった。私も行くよー」


 私は、篠宮さんを追いかけた。



 なんの躊躇いも無く、サウナへ入る篠宮さん。

 しかし、一歩入った瞬間に、表情が曇った。



「……浅香さん、これは、やっぱり新手の拷問ね」


「そうなんですよね。サウナっていうのは、この暑い空間で汗をかくことによって、体中の老廃物を出して、気持ちよくなるっていうところなんです」


 篠宮さんは、フラフラしながら私に向かって言ってくる。


「申し訳ありませんわ。全然頭に入ってこないので、手短に説明をお願いします」


 やっぱり初めてサウナ入る人は、こうなっちゃうよね。


「サウナは、汗かいてスッキリするところだよ」


 私の簡潔な説明に合点がいった篠宮さんは、納得した顔をしていた。


「そうなのですわね。これは、なかなか汗をかきそうですわ……」


 篠宮さんは、こう見えても辛抱強かったりするから、私は初めに釘を指しておく。


「けど、あまり無理しないようにだよ。ほうしないと危ないからね」


 私がそう言うと、篠宮さんはすぐに動いた。

 決断力の早いところも、篠宮さんのいい所だ。


「では、一旦出ましょう。一度水分補給をしてから……」


 篠宮さんは、そう言ってサウナを出た。

 一緒になって私も出ると、外気がすごく涼しく感じられた。


 篠宮さんは、少しだけしかサウナに入ってなかったけれど、スッキリした顔をしていた。


「この短時間で、この気持ちよさ。気に入りましたわ! ‌私、サウナというものが好きになりました!」

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