ひな祭り
私は、ひな祭りが好きなんだ。
ひな祭りには、年に一回雛人形を飾るの。
私の家の雛人形はとても大きい。
お母さんの時から家にあるもので、いわば、お下がりなんだけれども、私はすごく好きなの。
雛人形を飾ると、なんだか自分がお雛様になれた気分になれる。
綺麗な台座の上で、お内裏様と隣り合わせで並ぶんだよ。
それで、その下には、お付きの者達がいたりして。
すごく憧れるなぁー……。
私の雛人形は、七段飾りなの。
お内裏様は、カッコイイあの人かな?
なんて想像したりしてね。
ふふ。
けど、学校では、うるさい女子三人組で過ごしてるから、『三人官女』なんて呼ばれたりしてるんだ。
誰のお付きになってるんだっていうんだよ。
三人官女の事をなんだと思ってるんだろうね?
私は、お雛様が良いんだよって言う。
雛人形を並べながら、お雛様の顔を眺める。
すごく可愛いよね、この子。
綺麗に笑ってる。
お内裏様は、とってもカッコイイ。
そういえば、この雛人形を昔の彼氏と一緒に見てたりしたな……。
雛人形を好きな人と見ると、結ばれる。
私の中で、そういうジンクスがあるんだ。
今まで付き合った人はみんなそうだったの。
お母さんの時から言われてるジンクスなの。
お母さんも、お父さんと付き合う前には、この雛人形を見てたらしいんだ。
そのあとすぐに付き合ったらしいの。
そんな、雛人形。
今日は、
「お母さん! この道具、なんだかちょっと汚くなってない?」
「そうなの? そうしたら綺麗にしないとだね」
「早くしないと、大和君が来ちゃうよ!」
「だから、昨日出しときなって言ったじゃない!」
私は、夏休みの宿題やり忘れてた時以来の怒られ方をしてる……。
けど、今日は大和君には、この雛人形を見せたいの。絶対に。
次の学年になったら、違うクラスになっちゃうかもだし……。
――ピンポーン。
「……やばい、もう来ちゃった。ちょっとどうしよう」
「とりあえず迎えに行ってきな?」
「うん」
玄関まで行って、大和君を迎える。
「どうも、お邪魔します。言ってた、お土産持ってきたよ」
「あー! ありがとう! それ好きなんだ」
お土産の紙袋を受け取って、私の部屋まで連れていく。
お母さんは、まだ飾り付けが終わっていないようだった。
「どうも、初めまして大和と言います」
「どうもどうも、いつも話は聞いてます。実物は、すごいカッコッいいわね。ふふふ」
そう言ってお母さんは、部屋を出ていった。
「……もうお母さんったら。飾り付けも途中だし」
「この雛人形すごいね!」
「うん。本当はもっとすごいんだよ。まだ途中なんだ。ごめんね」
「そうなの? じゃあ、俺も手伝うから完成かせようぜ。せっかくならさ」
「……うん」
見せるだけのはずが、大和君と一緒に飾り付けをし始めた。
「これも、すごい細かい作りしてるね!」
「そうでしょ!」
これも、これで、良い思い出になりそう。
ふふ。
やっぱり、ひな祭りって好き。
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