3月
365日のマーチ
いつもの公園へ、彼と一緒に来る。
例え彼と付き合っていても、そこから先に発展するかどうかは、仲の良さでは決まらないと思う。
精神年齢が影響していると思うのです。
長いこと付き合っているのに、私と彼氏は全然発展しないのだ。
手をつなぐくらいの関係。
別に、冷めたとか、仲が悪いとか言うことは一切ない。
二人とも好き同士なんだけれども、発展しないのだ。
どうにか、先に進んでみたいって、私だって思うよ。
けど、今日も外が暖かいからキャッチボールをしようって言ってきた。
私の彼氏は、頭の中、春満開です。
「行くよー! ほーら!」
私の彼氏は、自由。
そして、幼稚なんだ。
……そんなところが好きなんだけどね。
キャッチボールと言っても、硬球なんて使わない。
子供が遊ぶようなゴムボール。
ボールプールに使うような、ぺこぺこへこむようなボール。
男子が好きな、赤色のボールを持っている。
そんなボールを外で投げたらどうなるかって言ったら、まっすぐ相手まで飛ばない。
風に流されてしまっていた。
「あれー? 上手く飛ばないな。もう一回もう一回!」
自分で投げたボールを、自分で取りに行っていた。
自分でボールを飛ばして遊んでいる犬みたい。
私は、少し遠くから彼を眺めているだけ。
立っているのも疲れたので、しゃがんで待つ。
彼は良い奴なんだけどな。
もっと、私のことを考えてくれても良いのに。
私がぼーっと彼を眺めていると、私のもとに小さい男の子がやってきた。
「幸せは、歩いてこない一。だから僕は歩いていくんだよー」
可愛い声で、よちよち歩いて行進曲を歌っているようだった。
「一日一歩! 戻っても、また進む-!」
「それ、可愛い歌だね」
私が男の子にしゃべりかけると、男の子はこちらを向いて歩みを止めた。
「良い歌でしよ。僕は、幸せに向かって毎日歩くんだ。そうすると、一歩ずつ幸せになっていくんだよ。お姉ちゃん、今幸せ?」
子供って、たまに鋭い質問をするよね。
「幸せじゃない」って言ったら、嘘になるけれども、まだ幸せじゃない気もする。
私が答えに迷っまていると、男の子が話を続けた。
「悩んでるなら、幸せじゃないんだよ。お姉ちゃんも幸せに向かって、歩いたらいいよ!」
「……幸せに向かってね。私の幸せってなんだろうな」
男の子と話していると、
「今度こそ、そっちに届くように投げるよー」
ボールを投げても、風が強いから届くわけないんだよ。
いつもいつも、幼稚なことばかり。
「……あのさ、信吾」
男の子の言う通りら私も歩みよらないとかもだな……。
今まで、私から歩み寄ったことなかった。
デートの提案もしたことなかったし。
全部、信吾任せだったから。
「そのボールで遊ぶなら、屋内じゃなきゃダメだよ」
「ほえ?」
間抜けな声を出す信吾。
「……あのさ、私の家に行こう」
「……え? い、いきなりどうしたの」
「いいから行くよ。今日は私が遊びを提案するからさ」
「え、ええ。わかった」
……ふふ。
上手くいったかも。
私は、男の子の方を見ると、男の子は笑って言った。
「幸せは、自分で歩いて取りに行かないとね!」
それに対して、私も笑って答えた。
「うん、365日のマーチ。私、大好きだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます