手芸

 私は、姉の部屋に入ってベッドに座った。

 姉は、大きなテーブルの上に色とりどりの布や糸やボタンを広げていた。

 服飾大学に通っている姉は、ハンドメイドが大好きで、いつも何かを作っている。



「ねえ、お姉ちゃん。もう少しで私も中学卒業だからさ、友達に何か作りってみたんだ。出来れば可愛いのが良いんだけど、教えて欲しいです」


 姉が、ニヤッと笑って答えた。


「へぇ。真紀まきも、そういうのに興味を持つようになったんだねー。女の子だねー」

「そうだよ。私だって女の子だもん……」



 姉は、ずっとニヤニヤしていた。

 私がちゃんとお願いしに来てるのにな。もう。


「それで、真紀はどんなの作りたいの?」

「あんまり決まっていないけれど、ぬいぐるみとか……?」


 笑われるのを警戒して、恐る恐る言って見たけれども、姉は真面目な顔になっていた。


「机の上に置いておくようなサイズが良いかな?」


 姉は、作品を作る段階になるとすごく真面目になるんだよね。

 お姉ちゃんのこういうところは、好きだったりする。


 私も真面目に答える。


「うん、それでね。いつも一緒にいる三人組でお揃いの物が良いなって思うんだ。机に置いておくぬいぐるみっていいかも!」

「よし、じゃあそうしよう!」


 姉は、すぐたちが上がると、机と壁の隙間のスペースに置いてあった布を持ってきた。


「今の私の手持ちは、こんな色だけれども、これで良いかな?」

「うん、丁度三色あるし、良い感じ!」


 私がそう答えると、姉は笑って親指を立ててくれた。


「じゃあ、私がお手本を作っていくから、一緒に真紀も作って行こう」

「はい! よろしくお願いします!」


 真面目な時のお姉ちゃんには、私も真面目に従うことにしている。

 姉は、机の上一杯に布を広げた。


「まずは、型紙が欲しいところだけれども、どんな感じのぬいぐるみが良い? 私がフリーで引いてくよ」


 特に型紙というものを使わないでも出来るんだ。

 お姉ちゃん、ベテランだな。すごい。


「クマちゃんとか?」

「うん! 確かに、それ可愛いかも! クマにしたい!」


「OK!」


 お姉ちゃんは、サササーっと、線を引いていった。

 フリーで書くのに、すごく綺麗な線を引いていった。

 真っすぐなところは曲がらないで、曲線は綺麗に弧を描いていった。



「これを型にして、他のも作って行こう。真紀は、これを元にして輪郭の線を引いていってみて」

「はい! お姉ちゃん!」


 私もお姉ちゃんみたいに、線を引いて行く。


「線を引くだけなのに、難しいんだね……」


 私が書くと、お姉ちゃんとは違って、線がブレてしまっている。


「大丈夫。布を切る時に、調整できるからさ。真紀がちゃんと作って行くのが良いから、線も頑張って!」

「はい!」


 なんとか、三人分のクマさんの線を引いた。


「ふぅ。これだけでも疲れるね」


 私がそういうと、お姉ちゃんは笑って返事をしてきた。


「まだ、全然始まってもいないよ。一日で作るの難しいかもだから、日をまたいでも良いから、全部作ろうね」

「ありがとう。お姉ちゃん。卒業までもう少し先だからね。私、頑張る!」


「うんうん。これで、真紀も、私みたいに手芸が好きになってくれたらいいな! 手芸って楽しいからね、私は好きなんだよー!」

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