ゲームボーイ

 学校にゲームを持ってきちゃいけないと言われていたが、今日だけは別だった。


 中学校には、パソコン学習の時間がある。

 パソコンをいじって遊んでいるようなものだけれども、今日はもっと特別だった。

 古い技術に触れてみようという授業で、昔のゲームを持って来てくださいということを言われたのだ。


 古いゲームって何かあるかなって家の中を探したけれど、私は何も持って無いんだよね。

 みんなパソコン室に移動する時に、何やら袋に詰めて色々持ってきていた。


 窓は黒い遮光カーテンで、閉じられたパソコン室。

 空気の流れも悪いような部屋に、みんなレトロなゲームを持ってくるものだから、部屋の空気は一層悪く感じられた。


 パソコン室の隣の席の山田も、同じく袋に詰めたゲームを持ってきていた。

 山田は、結構小綺麗なイケメンタイプ。


 そもそもレトロなゲームを持ってるのかと不思議に思ったけど、そこは男の子なのだろう。

 袋には見慣れないゲーム機が入っていた。


 周りのみんなと違って、袋からして綺麗。

 ゲーム機を取り出しても、そのゲーム機も新品のように綺麗だった。


 初めて見るような、よく分からないゲーム機に、私は少し興味を持った。


「山田、古いゲーム機持ってるんだね」

「これのこと? ‌ゲームボーイって言うんだぜ、知ってる?」

「名前は知ってはいるけど、見たことも、やったことないな」


 私が答えると、山田はニコッと微笑んだ。


「じゃあ、やってみる?」


 今日のパソコンの授業の前半は、古いゲームを実際にやってみるというものだった。

 私は、ゲーム機を持ってきてないので、山田に借りることにした。


「単三電池……?」


 山田は慣れた手つきで、ゲーム機の後ろに単三電池を入れ出した。


「そうそう、電池入れないと出来ないからさ。久々にやるからって、買ってきたよ電池」

「はぁ……。今と全然違うんだね。こんな所からして違うとは」


 山田もうんうんと頷いている。


「そうだろ、今ではリチウムイオン電池とか、充電出来るような電池ばかりだから、こういうの見たことないだろ?」

「私は見たことないって言うか、私達の世代はほとんど見たことないと思うよ。なんで山田は、詳しいんだよ」

「俺は、ゲームが好きだからな!」


 よく分からない理由と共に、親指を立ててポーズを決める山田。

 なんだかよく分からないが、山田から一昔前のレトロな雰囲気を感じた。


「まぁいいや。これってどう遊ぶの?」

「まず、ここで電源を入れてだな……」


 私に丁寧に教えてくれる山田。

 いつものパソコンの時間は、そんなに話した事ないのに、ゲームボーイを通じてなんだか話かけやすかった。


 私の手の上にあるゲームボーイを一緒になって眺めながら、山田が色々解説してくれる。


「ボタンは二つだけなんだよ。それもシンプルでいいだろ?」


 全然嫌な感じがしなかった。

 むしろ、夢中になってる山田って、ちょっといいかも……。

 私は、楽しそうな山田に声をかける。


「山田ってさ、ゲーム好きなんだね」

「おう! ‌やっぱりゲームって楽しいからな! ‌特に、俺はゲームボーイが大好きだよ!」

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