わんこそば

 二月の三連休になりました。

 今年は建国記念日が日曜日と重なったからって、月曜日が休み担って、三連休なんだ。

 そうしたら、うちのお父さんは、「東北へ行こう」と言い出したの。

 お母さんも、旅行好きだから二つ返事で受け入れてたの。


「いいよ! ‌すぐ行こう!」


 そういうお母さんに、私も少しは抵抗しようとしたんですよ。


「……子供である私の意見は聞かないのでしょうか?」

葉月はづきも行きたいでしょ? ‌一人でお留守番する?」


 私も恐る恐る言ってみたものの、お父さんとお母さんは譲る気は無いようで。

 私は、すぐに諦めたのでした。

 私が少し俯いていると、お母さんとお父さんは言ってきました。


「行ってみたら、楽しいから大丈夫!」

「葉月も、東北の良さを体験しよう!」


 私は、人の話を聞かない大人にはなりたくないな……。



 ◇



 私は、家族で新幹線に乗り、東北へと行った。

 東北への道中、窓の外を見ていると既に雪が降っているのが見えた。


『トンネルを抜けるとそこは雪国だった』と、言われるけれども、意外と早い段階で雪国が訪れた。

 関東では滅多に見れない雪景色を見て、私はお母さんに言った。


「二月の東北って雪がいっぱいだね」

「そうよね。やっぱり冬に暖かい地方に行くよりも、寒い地方に行く方が四季を味わえていいわよね」


 私は何気ない驚きを共有しただけのつもりだったけれども、お母さんは雪に夢中の様子だった。

 ウキウキした笑顔し見せながら、窓から雪を覗いていた。


 雪に感動してるなんて、子供っぽいなぁとお母さんを見ていると、視界の端で、お父さんも雪に夢中になっていた。

 窓の外をすごく凝視していた。


 まったくうちの親達は……。



 ◇



 東北へ行くと言っていたが、どこへ行くかと思ったら目的地は岩手県の盛岡であった。

 せっかくなら終点の青森まで行ったらいいと思ったが、お父さんは盛岡に行きたかったらしい。


「今日は、盛岡でわんこそばが食べたいんだ!」


 そう言いながら、盛岡駅に着くとすぐにわんこそばの店へと向かったのであった。


 わんこそば、食べ放題の店。

 お父さんは一度来たことあるのか、すいすいと入っていく。


「ここの、わんこそばがいいんだよ」


 違いは分からなかったが、盛岡に着いてすぐにわんこそばを食べるなんて、相当美味しいところなのだろう。

 店に入って注文すると、すぐに食べ放題が始まった。


 私やお父さんお母さんが食べてる横に、給仕の人が立っていて、ニコニコと笑っている。


「どんどん食べてください!」

「は、はい……」


 私は言われるまま、わんこそばを食べ進んだ。

 私がおわんの中のそばを食べ終わると、どんどんとわんこそばを入れてくる。


 盛岡に到着して、いきなりだよ。

 そんなに、食べれないよ……。

 それでも、どんどん入れてくる。


「はい、どんどん」

「……ええっと。もう食べれませんよ」

「はい!」


 返事はいいのに、聞いてないみたい。

 ニコニコした顔を浮かべて、次の一杯を入れてくる。

 大人は、話を聞かない生き物らしい。


 いくら食べても良い食べ放題だとしても、もう無理だよ……。

 お父さんは、満足そうな顔をしながら食べていた。


「やっぱり美味しいな! ‌ここのわんこそば好きだな!」

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