和チョコ

 学校から帰ると、いつも友達と公園に遊びに行く。

 けれども、友達は今日習い事があるからって、私は一人で家で遊ぶことになった。

 残念だけど、しょうがない。


 けど、嬉しいこともある。

 こういう日は、家でおやつを食べれるのだ。

 そこだけは、楽しみだった。


 楽しみだとしても、お母さんにおやつをねだりすぎると、お母さんが怒ってしまって、おやつをもらえないこともあった。

 だから、慎重に聞かないといけないんだ。


 ソファーに座るお母さん。

 テレビを見ながら聞いてくる。


裕美ひろみ、今日は遊びに行かないの?」「そうだよ一。なんで?」


 私は普段通りに答える。

 おやつを期待してることが、ばれないようにしないと。


「じゃあさ、今日のおやつはチョコを食べよう」


 お母さんはそう言うと、ソファーから立ち上がって冷蔵庫へと向かった。

 そして、ソファーへと帰ってくる時には、小さな箱を持っていた。

 ソファーへ座るお母さん。


「これね、お母さんの姉さんがくれたチョコレートなんだ」

「へぇ? ‌なんだか高級そう」

「そうなのよ。わかる?」


 私は心の中で喜んでいた。

 やった。高級チョコレートが食べれる。


「お母さんが京都の姉さんにミカンを送ったんだけどね。それのお返しって言って、このチョコレートをくれたのよ」

「ミカンがチョコに変わったんだね。それは、嬉しい!」


 もちろんミカンも好きだけれども、別の甘いものも食べたくなるからね。

 わーい。高級チョコレートだ。


 お母さんがチョコの箱を開けると、箱の中から綺麗に並んだチョコが現れた。

 十六区画に仕切られた箱で、その区画に一つ一つチョコレートが入っている。

 一口くらいの大きさで、真四角のチョコレートだった。

 チョコは抹茶味なのだろうか、緑色をしていた。

 お母さんと私は、目を輝かせた。


「お母さん、これは、すごいね」

「確かに。ただのミカンのお礼のはずなんだけれども、なんだか見たことないくらいの高級感ね」


 お母さんと驚きあっている。

 ゴクリと唾液を飲み込むと、お母さんに聞いてみた。


「食べていい?」

「もちろん」


 箱には、チョコ専用棒が入っていたので、私はそれを取ってチョコに刺した。

 チョコを刺す時の感触はとても柔らかかった。

 低反発枕に沈み込むような感覚。


 下まで刺ささったのだろう。

 手には箱の硬さを感じた。

 そのまま、チョコを持ち上げる。


 半分流体のような持ち心地。

 これは、絶対美味しいよ。


 私は持ち上げたチョコを口へと運んだ。

 口に入れると、口の中に柔らかさを感じさせると、すぐに溶けて言ってしまった。


「何だこのチョコ!? ‌初めてだよ、こんな食感!」


 私の驚いた声に、お母さんはニコりと笑っていた。


「お母さんも食べよう」


 お母さんも、私と同じように、チョコを刺す段階から驚いて、口に入れても驚いていた。

 そして、ニコニコした顔は、もっととろけるような顔になった。


「美味しい。これ、初めて食べたけど、和チョコつ言うらしいよ!」

「和チョコ……。私これ好き!!」

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