帰省

 冬休みに入る前、お母さんは「今年は帰省をしよう」と言っていた。

 私は、久しぶりに東北に行けるんだと思って、ウキウキした気分になっていた。


 けれど、帰省しないまま、もう二月。

 長い冬休みに帰省しなかったので、お母さんに「いつ帰省するの?」って聞いても答えてくれなかった。

 そんな感じで、二月を迎えていた。


 もう帰省は諦めかけていたけれども、気になったのでお母さんに聞いてみたら、今年は時期をずらして帰省するらしかった。

 長い間滞在しないからと、二月の三連休で帰省しようと、お母さんが言っていた。


 夏休みは車で帰省したんだ。

 けど、今回は滞在が短いということもあってか、新幹線で帰るらしい。

 お母さんは、「冬の東北は雪まみれだから、新幹線です」と言っていた。



 そんな三連休初日。

 私たちは、朝早く電車に乗り、東京壁へと来ていた。

 東京駅は、早朝なのに人が多く歩いていた。

 みんな、新幹線に乗ってどこかへ行く人たちだと思われた。

 大きなキャリーバックを持って、お土産の袋も一緒に持っていた。

 そして、なんだかウキウキとした顔をしていた。

 私は、お母さんの手を引いて確認してみた。


「みんな旅行に行くのかな? なんだか楽しそうだね」

「そうね。三連休は旅行のチャンスだからね」


 お母さんも、なんだかウキウキした顔をして答えてくれた。

 私たちも、お母さんの実家まで旅行だもんね。

 普段と違うところへ行くって、なんだかワクワクする。


 ――グーー……。


 私のお腹がなった。

 早朝だったので、今日はまだ何も食べていない。


「あらあら、朝ごはんはもう少し待ってね?」


 東京駅で、私たちは駅弁を買っていくことになった。

 駅弁は新幹線で食べる朝ごはん用だ。


 駅構内の駅弁屋へ入ると、各地方の駅弁が揃っていた。

 地方の名産牛の焼肉弁当、海産物を多く使った丼。

 紐を引っ張ると温まるようなお弁当もあったりした。

 私は、お母さんの手を握りながら考えた。


「お母さん、これ選ぶの難しいよ。どれも美味しそうだよ?」

「そうだよね。こんなにたくさんの中から駅弁選ぶのって楽しいよね。目移りしちゃうけれども、一つだけだよ?」

「うん。わかった」


 本当にどれも美味しそう。

 各地方が自分達の地方の名産を精一杯アピールする場になっている。

 どれも甲乙つけられないよ。

 私がそう思って悩んでいると、お母さんはお弁当を一つ手に取った。


「お母さんはこれにしようかな。行ったことがない地方の焼肉弁当!」


 お母さんが嬉しそうに手に取ったお弁当は、とても美味しそうに見えた。


「いいな。美味しそう」

真由美まゆみが別のお弁当を買ったら分けっこしよう!」

「うん!」


 私は、焼肉とは味が被らないように、海産物が入ったお弁当にした。


「真由美、いいお弁当を選んだね!」


 これから新幹線に乗って、食べるんだ。

 帰省する時って、行きの道中から楽しみがいっぱいだ。

 私、帰省って好き。

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