ツムゲーム

 仲良しグループで弁当を食べる。

 食べ終えると、各々スマホをいじりだす。


「これ、可愛いよね」

「私、200万点いったんだよ! どうだ!」


 どうやら、ツムゲームの話をしているらしい。

 可愛いキャラクターが出てくるゲームだ。

 私も、そのくらいは知っている。


 テーマパークなどにいるキャラクターをデフォルメして、俵状にしたキャラクターが出てくるゲームだ。

 そのキャラクターは、手足も短くて、パタパタ動かしていて可愛い。

 私はスマホゲームは、やらないけれど、少し気になっていた。

 クラスメートの間で、よく話題になっている。


 私は、ゲーム内容を以前調べてみたことがあった。

 ゲームを始めると、可愛いキャラクターがスマホ一面に詰められた状態になる。

 その画面で、隣同士で並びあった同じキャラクターを指でなぞっていくのだ。

 そうすると、なぞられたキャラクターは消えて、新しいキャラクター達がまた詰められていく。

 それを繰り返していく。


 時間内に多く消すことで得点を競うようなゲームだ。

 クラスメートが話しかけてくる。


美波みなみさんは、ツムゲームやらないの?」

「私は、そういうものは、やらないな」

「えぇーどうして?可愛いのに」


 私は、ゲームというもの自体をやらない。

 それをするよりかは、本を読んだり勉強をした方が有益だと思ってしまう。

 クラスメート達は、楽しそうにスマホ画面を見せ合ってゲームをしていた。

 今までずっとやっていなかったのに、可愛いからとやり始めるのは、何かに負けた気がする。

 お調子者の男子が、私たちの集まりにやってきた。


「見て見て、すげーだろ一。俺期間限定のキャラをゲットしたんだ!」

「ええー。すごーい! いいなー!」


 男子は、得意気にしている。

 そして、私の方にもスマホ画面を見せてきた。


「ほら、美波も見てくれよ! やっと出たんだよ、このキャラ。すごいだろー!」


 スマホ画面に映るのは、見たことあるキャラだったが、少し雰囲気が違う可愛い表情をしていた。

「……可愛い」


 ついつい声が漏れてしまった。

 そのくらい可愛かった。

 男子は、得意気に言ってくる。


「いいだろ。これ、可愛いだけじゃなくてすごく使えるんだ」

「けど、私はこのゲームやってないからな……」

「じゃあ、今から始めたらいいじゃん。面白いよ。みんなでやると、コインも溜まりやすくなるんだ」


 私もやりたい気持ちがあった。

 けど、やり始めるきっかけが、ずっと無かった。

 今なら、すんなり始めてても良い機会かもしれない。


 もう少し、強引に来てくれたら、始めやすいのだけれども。

 クラスメートは、男子を止めようとした。


「無理やりは良くないよ。美波は勉強が忙しいんだよ?」


 男子は、怯んでしまった。


「そりゃそうか。ごめんな、無理やり誘っちゃって」


 いつもは、答えないのだけれども、私はついつい言ってしまった。


「……私もそれやりたいかも」


 私が答えると、その場にいるみんなが、嬉しそうな顔になった。


「おお、マジか! 誘ってみてよかった。一緒にやろうぜ!」


 楽しそうにするみんな。

 やっぱり楽しいのかもしれない。


「そのツムゲーム。可愛いって思うし、好きになったから。やってみようかな」

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