節々の痛みゼロを目指す日

 この世には、筋肉痛というものがあるのです。

 私は、そのことを久しぶりに思い出しております。


 そんなに激しい運動はしていないんだよ。

 ただ単に、テーマパークで遊んでいただけなんだよ。


 昨日は、創立記念日だったんだ。

 だから学校が休みでね。


 私の親友の眞規子≪まきこ≫がルンルンとしてやって来て言ってきたの。


「この時期のテーマパークって、とってもお得なんだよ」って。

「空いているし、そして値段も安いんだよ」って。


「そりゃあ、行くしかないな」ってなってね。



 最近になって、テーマパークの値上げが発表されたんだ。

 繁忙期と、そうでない時の値段が違ったりするんだよね。

 バイトで生計を立ててる私には、こんなに嬉しいことは無くて。

 二つ返事で、テーマパークへと遊びに行ったのでした。


 一月に学校を創立してくれた初代校長先生に感謝です。

 そう思いながら、眞規子と一緒になって一日中遊びまわっていたんだ。


 パーク内が空いているからって、はしゃいで走ったりもしちゃったっけ。

 並んでる時も浮かれてて、ルンルン身体を動かしちゃってた気がするな。

 それを一日中。


 疲れを忘れて、ずーっとぐるぐるとパーク内を回ってて。

 それで、昨日は、ぐっすり眠れてね。

 快眠だーって思ってたの。


 そして、今日です。



 授業中、身体が痛くてノートを書くこともままならない。

 足腰のみならず、腕やら背中やら。

 全部が痛い。

 これが筋肉痛というものだと、久しぶりに痛感している私です。



 痛みに耐えながら、どうにか学校へと来たけれども。

 これは、授業どころじゃないよね。

 一緒にテーマパークで遊んだ眞規子は私の前の席に座っている。


 眞規子は、意外と平気そうに授業を受けていた。

 何で? 私と同じく、帰宅部なのに?

 眞規子って、そんなに筋力があるの?


 あんなに華奢な体をしてね。

 私よりも、細くて、体重が軽いんだよ。

 羨ましいなーって思いながら、よくよく眞規子を見ると、首筋に白いものが見えた。


「あ、湿布だ」


 久しぶりに見たな、湿布って。

 そうか、眞規子はこれで筋肉痛対策をしていたんだ。


 首のあたりが見えるっていう事は、きっと全身に貼ってあるんだよ、絶対。

 その手があったか。


 眞規子、私にも教えてくれれば良かったのに。

 うー。


 ◇


 身体が痛いーって思いながら耐えて耐えて、修行のチャイムが鳴った。

 授業は終わると、眞規子はこちらを向いて話しかけてきた。


「良美≪よしみ≫は、準備不足だなー。ずっと小さく唸ってるの聞こえてたよ。筋肉痛でしょ?」

「うん。眞規子ずるいよ、湿布張ってるなんて」



 眞規子は、笑って答えてくる。

「私みたいな華奢な人がテーマパークに行くなら、これは常識だよ」

「そうなんだね、私も次から気をつけないと」


 私がそう返す間に、眞規子は鞄からスティック状の糊のようなものを出してきた。


「ほら、これ塗りな? 塗るタイプの湿布。これで幾分か良くなるはずだよ」


 窓からの光の加減なのか、眞規子に後光がさしているように見えた。

 私は、眞規子に答える。


「優しい、眞規子。ありがとう」

「これで、無痛とはいかないけどさ、節々の痛みゼロを目指そう!」


「うん!」


 私は、眞規子からスティックを受け取る。


 今日は、どうにかして節々の痛みゼロを目指す日。


 眞規子の優しさに触れて。

 そんな日も、私は好きだなって思ったよ。

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