カラオケ
高校に入ってから最初の冬がやってきた。
このクラスメンバーと初めて顔を合わせてから早いもので、もう九ヶ月か。
時の流れは早いものです。
一月ももう中盤を過ぎてしまってる。
このクラスが解散するのも、もうすぐなんだよね。
そんな時期なのに。
未だに私は、クラスに打ち解けられてなかったりする。
元々、中学校から仲が良かった人もいたりして。
このクラスになった時から仲が良かったりする人もいたんだよね。
だけど、私みたいに、そうじゃない人もいるだよ。
羨ましいなって思ったりもする。
いいよな一……。
部活に入っている人たちは、その仲間で固まったりするし。
私は部活に入っていないから、いつも一人だよ。
別に寂しくなんかないもん……。
放課後が迫ってくると、みんなガヤガヤと話し始める。
私は一人で席にいると、隣の席の
話しかけてきたのは、いつも明るい
「今日さ、カラオケ行きたいんだけど、どう?」
「今日はね、ちょっと用事あるんだよなー。どうしようかなー」
贅沢な悩みもあるものです。
私もカラオケ好きだけれども、一緒に行く人がいないから、いつも我慢してるのに。
うぅ……。
私が誘われたら、嬉しくなって飛んで行っちゃうよ。
そんなことあるわけないけれども。
「そうだ、代わりに
ふいに、声をかけられた気がした。
花岡さんの方を見ると、目が合ってしまった。
あれ?
本当に私に声をかけたの?
そんなこと、あるはずないと思っていたから、聞き逃してしまったよ。
「あぁ、雪岡さんも忙しいかー。いつも早く帰っちゃうもんね」
……え、え?
本当に私に聞いてるの?
え、本当に?
う、嘘だよね?
「あはは。雪岡さん、聞こえてるのかな? そんなにキョロキョロして慌てなくていいよ。別に無理に誘ってるわけじゃないからさ」
「え、いや、その……」
花岡さんは、優しく笑ってくれる。
「雪岡さんって、意外と可愛い声しているからさ、歌ったら上手いかなって思って。せっかく同じクラスになったのに、遊んだことないじゃん?」
本当に私を誘ってくれてるみたい。
すごく行きたい。
行きたいけれども……。
まずはステップというか……。
いきなり花岡さんの前で歌うなんて、ちょっと緊張しちゃうというか……。
私の心の声は聞こえていないはずだけど、もじもじした姿で察してくれる花岡さん。
「はは、緊張しなくていいよ。私なんてすごい歌下手だし、月岡もすごく下手だよ」
「いや、私、花岡より下手じゃないし」
そう言って笑い合う二人。
二人とも仲良いな、羨ましい。
「どうかな? せっかくなら行こうよ」
花岡さんが誘ってくると、月岡さんも乗ってくる。
「雪岡さんが行くなら、私も行くよ。行こうよ」
けどけど……。
最初の一歩が踏み出せないよ……。
「じゃあーさ。質問変えてみようかな」
花岡さんは、一呼吸おいて聞いてくる。
「私のこと嫌い?」
「え、いや、そんなことないけど……」
「じゃあ、月岡のこと嫌い?」
「そんなことも無いけど……」
「ふふ、じゃあカラオケは嫌い?」
こんなに親切に聞いてくれるんだもん。
その誠意に対して、ちゃんと答えないと。
曖昧な答えじゃなくて、はっきりと。
「嫌いじゃないよ。むしろ好きだよ、カラオケ!」
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