都営バス
うちの高校は駅から遠い。
それに加えて、坂をすごく登っていく必要があるんだ。
駅が低い所にあるから悪いのか。
学校が高い所にあるのが悪いのか。
別に、どっちが悪いってわけじゃないんだけれども。
坂の上にある学校。
通学がいつも大変なのです。
重い荷物があるときとか、雨が降る日なんかは、私はバスを使って学校まで行くんだ。
都営バス。
薄い緑色と、薄いオレンジ色。
可愛い見た目とは裏腹に。
とっても頼りになるやつって思ってる。
私のお父さんみたいな、バス。
毎回乗るときは、もちろんお金を払うんだよね。
それは、お小遣いを何とか、やりくりして。
こんなに駅から遠いなら、学校専用のバスがあればいいのにって思うけれども。
そこは、公立高校っていうとこだよね。
公共の交通機関を使うしかない。
今月は、おやつ控えないとだな……。
冬とか夏とか。
気温が安定しない時は、バスに乗る人も結構いるんだ。
私も乗る派。
少し贅沢な気もするけれども、すごく快適なんだよね。
文明の利器は素晴らしいです。
困っているところにちょうど良くバス経路が設定されている。
これが無いと、私は高校に通えなかったかもくらい思っちゃう。
私に必要不可欠な、大好きなパス。
冬は部活もあるけれども、高校で補習授業っていうのをやるんだ。
出来の悪い子が集まるようなところ。
成績が悪くて学年上がれないっていうのは聞いたことが無いけれども。
先生はいつも「また一年生を繰り返すことになるんだからなー」って脅してきて。
そこは、進学校の悪いところが詰まってるって思うよ。
今日も補習授業で、帰りが遅くなっちゃった。
辺りは暗いし、外は寒いし。
お小遣いはピンチだけど、これはバスを使って駅まで帰るしかないかな。
大体の人たちは、帰りは歩くことが多い。
学校から駅までは、下り坂だから。
そんなに疲れないって言うのもある。
けど、補習の後に歩いて帰るなんてさ。
そんな精神力が私も欲しいものです。
バス停で待っていても、私の後ろに並ぶ人は誰もいなくて。
一人でバス停に並ぶ。
暗闇から、寒い風が吹いてくる。
この寒さは、雪でも降るんじゃないかってくらい。
そう思っていると、空から雪が舞い始めた。
私の足の速さだと、結局バスに乗る必要があったかな。
傘持って無いからな。
早くバスが来て欲しいな……。
寒い……。
頭の上に、ぼた雪が降ってくるかと思ったけど、中々降って来なかった。
何でだろうなって思って、空を見上げると、そこには傘があった。
不思議に思って、後ろを向くと、
そういえば、一緒に補習を受けてたのを見かけたな。
そんな山路君が、私に傘を被せてくれていた。
「補修、お疲れ様」
「山路君も、お疲れ様。傘ありがとう」
寒さのせいじゃないけど、二人共ぎこちない言葉を交わした。
「山路君は、傘持ってるのに、バスに乗るんだね」
「バス待ってるやつが傘持って無いみたいで、濡れちゃうと困るかなって思ったからさ」
そっか、山路君……。
私のために、バスに乗る気なんだ……。
「……ありがとう」
二人で待つバス停は、寒かったけれども、なんだか暖かかった。
「……バス、なかなか来ないね」
「もしかすると、雪で遅れてたりしてな」
「それだと、意味ないじゃん。困ってる時に来てくれないと」
「ははは、それな!」
そう言って、二人で笑いあった。
必要な時に、人知れず助けてくれる存在。
そういうのって、誰でも出来そうで、実際にやるって難しいから。
すごく良いと思うんだ。
「あのさ、山路君ってさ、好きなおやつってある?」
「ん? いきなりなんで?」
「それは……、秘密だよ!」
高いのだったら困っちゃうけどさ。
お礼は必要だって思う。
来月こそは、お小遣い貯めないとな。
「俺は……。うまい棒が好きだよ」
ふふ。
困ってる時に助けてくれる。
都営バスって、やっぱり私は大好きだ。
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