いいね

 私は、時々SNSで何気ない呟きをしている。

 今日の学校のことや、友達との会話や、好きなアニメの感想や、そんなことを。

 誰かに見られているという意識はあまりなくて、ただ、自分の気持ちを吐き出すように呟いてるだけだったんだ。


 でも、ある日、私の呟きに『いいね』がついた。

 見たことないアカウントの人からだった。

 私の呟きに『いいね』をしてくれる人なんて、どんな人だろうなって、プロフィールを見てみると、同じ年で、同じ地域に住んでいるらしい。

 趣味も似ているみたいだった。

 名前は、あおい君と書いてあった。


 あおい君が『いいね』をくれた呟きは、こんなことだった。



「今日の数学のテスト、難しかったー。でも、先生が優しくて、ヒントをくれたんだよ。先生、ありがとう!」



 私は、数学が苦手で、いつもテストで悩んでいた。

 でも、先生は私が頑張ってるって、努力を認めてくれて、励ましてくれたんだ。

 それで、テストについてのヒントをくれたりもして。

 だから、先生が好きだった。


 あおいくんも、同じことを思ってくれたのかな?

『いいね』をくれたのは、そういう理由なのかな?

 同じ気持ちを分かち合えたと思うと、私は、嬉しくなった。


 あおいくんに感謝したいなって思った。

 どうしたら感謝できるか分からなくて、あおい君の呟きをみると、同じように数学が苦手だよって言う呟きがあるのを見かけた。

 私は、あおい君の呟きに『いいね』を送った。


 そして、メッセージも一緒に送ってみた。



「『いいね』、ありがとう! ‌数学、苦手なんだよね。でも、先生が優しいと、頑張れるんだよね。あおい君も?」


 しばらくして、あおい君から返事が来た。


「いえいえ、こちらこそ、ありがとう! ‌僕も、数学が苦手で、先生に助けられてる。先生、本当にいい人だよね。私も、先生が好きだよ。」


 私と同じ気持ちの人がいることが嬉しくなった。

 もっと、私と同じこと言ってないかなって気になって、SNSをフォローしてみた。

 そしたら、あおい君もこちらをフォローしてくれた。


 きっと今も同じ気持ちだったのかな。


「フォローありがとう。また楽しいこと呟いてたら、『いいね』を送るね」

「僕の方こそだよ。楽しい呟き見ると嬉しくなるから、『いいね』を送るよ」


 やっぱり私と同じだ。

 あおいくんは、最後に言った。



「うん、そうしようね。じゃあ、またね。『いいね』、ありがとう」


 私は、あおい君とのやりとりに幸せを感じた。

 あおいくんは、私の気持ちを分かってくれる人。

 私は、あおいくんに『いいね』を送った。



『いいね』ってもらうと嬉しい。

『いいね』を送られた人を想像しながら送るのも楽しい気分。

 私、『いいね』って好きだな。

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