とんち

 私はとんちが好き。

 とんちっていうのは、相手の言葉に対して、ひねりの効いた返答をすること。


 とんちを使うと、会話が面白くなるし、相手の気持ちもわかるようになる。

 とんちを使えば、友達とも仲良くなれると思うんだよ。


 今日は、とんちを使って、友達と楽しい時間を過ごした。

 その友達というのは、結衣ゆいという子で、私と同じクラスの女の子。

 結衣は、とても明るくて、いつも笑顔で話しかけてくれる。

 私は結衣のことが好きだし、尊敬している。

 あっちは、私の事を何とも思っていないけれども。



 結衣は、とんちが得意。

 私は、結衣のとんちにいつも感心する。

 結衣は、とんちを使って、先生や他の生徒とも上手にコミュニケーションをとっているんだよ。

 私は、結衣にとんちを教えてもらいたいと思っていた。


 今日の放課後、私は結衣に声をかけた。


「結衣、ちょっといい?」

「なになに?」


「とんちを教えてほしいんだけど」

「とんち?」


 結衣は、驚いたように私を見た。

 そんな様子を見て、私は頭を下げた。


「ごめんね、無理なお願いだったかな?」

「いやいや、そんなことないよ。とんちを教えてもいいなって思うんだけど、どうやって教えればいいのかな」


 結衣は、考え込んだように顎に手を当てた。

 私は、期待と不安で胸がドキドキした。

 変なこと言っちゃったから、嫌われちゃかな。


 結衣は考えたのち口を開いた。


「そうだね、とんちを教えるには、実践が一番だよね。じゃあ、私が何か言ったら、とんちで返してみて」

「え、今すぐ?」


「うん、もちろん今すぐだよ。さあ、準備はいい?」


 結衣は、にっこりと笑って、私に挑戦を仕掛けた。

 私は、恐る恐る頷いた。


「じゃあ、始めるよ。えーと、じゃあね。教科書から、飴を出してみて」

「飴を出して……?」


 私は、結衣の言葉に戸惑った。

 教科書から、飴を出すって、どういうことだろう。

 私は、教科書を開いて、中を見た。

 飴なんて、どこにもない。


「結衣、これ、無茶なこと言ってない?」

「いやいや、とんちで返すんだよ。さあ、どうする?」


 結衣は、楽しそうに私を見た。

 私は、必死に考えたけれども、思いつかない。

 どうしよう……。

 とんちで返すとしたら、どういう言葉になるだろう……。


 うーん……。


「あ、わかった! 教科書から、飴を出してっていうけど、教科書にまだ飴は入ってないよ。まずは結衣が飴を入れてからです」


 私は、自信満々に言った。

 結衣は、私の言葉に驚いたように目を見開いた。

 そして、笑ってくれた。


「ふふふ。それ、面白いよ! 一休さんが、屏風から虎を出せって言ったのと、逆だね!」


 私は、結衣と笑いあった。

 とんちって、やっぱり面白い。


 結衣と仲良くなれた気がした。


 私、とんちって好き!

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