成人式
今日は、駅まで買い物に来ていた。
新学期に向けて、必要なものを揃えるためだ。
上履きも少し汚れちゃってたし、色ペンも新調したいなって思って。
新年になったし、新しい気持ちで学校に臨みたいよね。
新学期から、新しい私に生まれ変わるのです。
ふふふー。
駅前は人でいっぱいだった。
その中に、いつもは見ないような人がいた。
振袖姿の人。
キラキラしている赤色を基調とした振袖に、帯もキラキラとした花柄であった。
その人に、目が惹き付けられた。
髪の毛も綺麗にセットしてるし、メイクも隅々まで行き届いてる。
すごく、綺麗……。
見とれていると、目の前を通り過ぎて行った。
通り過ぎた方を見ると、向こうからも振袖姿の別の人が歩いてきた。
……あぁ、そっか。
今日は成人の日だから、振袖姿の人がいっぱいいるんだ。
振袖姿は、とてもオシャレに見える。
色とりどりの柄や、華やかな髪飾りや、きらきらしたアクセサリー。
それで、みんなとても幸せそうな顔をしている。
笑顔で友達と話したり、カメラにポーズをとったり、親に祝福されたりしている。
すごく、いいな……。
私も、早く成人したいな……。
私も、振袖を着て、お祝いを受けたい。
でも、私はまだ高校生。
市によって、『成人式』を行う年齢は違うらしい。
うちの市では、『二十歳の祝い』ということで、二十歳になったら、あの姿になれるのだ。
そう思うと、あと三年もある。
私は、まだまだ子供なんだよね……。
まだまだ大人になれないな……。
駅前の人通りを歩いていると、ビルの窓に映る自分が見えた。
冬用の大きなコート。
何年も着てるから、少しくすんでる。
髪は、ボブヘア。
メイクもしてないし、アクセサリーもつけてない。
私は、地味で普通で、何の特徴もないな……。
こんな私が着飾っても、あんなに綺麗にはなれないか……。
自分の姿を眺めていたビルの中から、綺麗な振袖姿の人が出てきた。
……こんな風になれたらいいのにな。
そう思って眺めていたら、ビルから出てきた人は、私に向かって声をかけてきた。
「あっ!
聞いたことある声だ……?
誰だっけ……?
「私だよー! バスケ部の先輩だった、桜井だよ! ちょっと睨まないでよー」
「え、あの、桜井先輩?」
昔部活でお世話になった先輩。
すごく力強くて、自らゴリラ先輩って呼んでって言ってた人。
髪も短髪だったし。
目の前にいる美人には、その面影が無かった。
「どうどう? 可愛いでしょ!」
「本当に先輩ですか? すごく可愛いです。嘘だって思います」
「何それ、失礼だなー、もう」
笑う顔は、確かに桜井先輩だ多。
手を叩いて、豪快に笑うんだ。
「ははは。私でもさ、こんなに綺麗になれるってすごいよね。成人式さまさまだよ。今日はプリクラいっぱい撮っておこうって思うんだよ。せっかくだから、一緒に行く?」
「え、あ、はい!」
成人式って、いいな。
自信が無かったけれど、私もきっと、こんなふうに綺麗になれるかもしれない。
早く来ないかな。
私の成人式。
こんなに、綺麗な大人に変身できる成人式。
私も好きになっちゃうな。
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