白色

 今日は和也かずやと一緒に、新春の初売りに来たんだ。

 主に私の服を買おうってことで、着いてきてもらったの。



 大きな駅近くのデパート。

 早朝なのに、お店が開く前に列が出来ている。

 私たちは、そこに並んでいる。


 ここに並んでいる人達は、みんな初売りに来ていて、それで個数限定の福袋を買ったりすんだ。

 和也は自分のものは買わないのに、文句も言わずに私と一緒に並んでくれているんだ。


 本当に、よく出来た彼氏だって思うよ。

 無駄な知識を披露するところが無ければ、最高なんだけどね。



「今日は来てもらってありがとう! ‌和也にも一緒に選んでもらえるから、嬉しいよ!」

「別にいいよ。暇だったし」


 ふふふ。

 今日は大丈夫そうかも。

 変な雑学に披露されずに済みそう。

 9時にならないとお店は開かないし、並んでいる間は比較的自由に過ごせる。

 私はウェブを検索して、再度私が買いたい福袋の中身を確認した。


「うーん、私の欲しい福袋。これって白色のセーターってなっているけれども、白色って言われても実は細かく種類あるよね。どんな感じかイマイチ分からないな……」

「あぁ、白って200色あるって言うしな」


「……」


 和也のスイッチ入れちゃったかもな……。

 こんな日に、せっかく着いてきてくれたから、少しくらいは雑学を聞いてやってもいいか。

 たまにはね。


「はは、それ聞いた事はあるよ。白って実はいっぱいあるんだよね、ちょっと青みがかった白とか、そういうの……」


「そうなんだ。白って200色という言葉が伝わってるけれども、正確に言うと違うんだ。カラーコードとして『白』とカテゴライズされているものは、実はもっとある。真っ白はRGBで表すと(255,255,255)なんだよ。16進数で表すと、#FFFFFFだね。この表し方で『白と定義されるのは、(245,245,245)までなんだ。だから、正確には11の三乗で、1331通りあるんだ」

「うーん?」


「さらに正確に言うと、プラスで#FFFAF0のfloralwhite、#FFEFD5のpapayawhite、#FAEBD7のantiquewhite、#FFDEADのnabajowhiteを入れた1335色だね」

「……で?」


「だから、白は1335色」

「……だから?」


 やっぱり、雑学を聞くのはダメだ……。

 言い返しちゃいたくなるよ。

 私のターンです。


「それで、今買おうとしてるのは、私に似合う白なのかな?」

「……そ、それは」


「私に似合うのは、どの白? 色々知ってても、私のこと知らないんじゃ、ダメだね。新年最初は、私の勝ちだね!」


 新年早々、言い負かしちゃったな!

 ふふ。


 怒ってるのか、和也はニコニコした顔をやめて、私の方を向いてきた。


「……お前は、何を着ても似合うよ。元が可愛いもん」

「……はっ? ‌な、なによそれ。し、白の話をしてるのよ!」


 真面目な顔で、何を言い出すかと思ったら。

 うぅ……。

 恥ずかしくなって、言葉が出ない……。


「どの色のお前も見てみたいな。今日はいっぱい試着して見せてくれな!」

「……うん」


 和也ったらさ。

 私は、白色の話してるのにさ……。


 今日は、色々試着してみようかな。

 白色でも、微妙に色違うしね。


 私、白色好きなんだ。

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