箱根駅伝

 私は父と一緒に箱根駅伝を応援しに来た。

 父は毎年この日を楽しみにしていて、私も小さい頃に一度見にきたんだって。

 あまり覚えてないんだよね。


 父は元々ランナーだったらしくて、箱根駅伝に出場したこともあるらしい。

 私が大きくなってから、その話をあらためて聞いたの。

 それで、私は箱根駅伝に興味が湧いたんだ。



 選手が走る沿道に着くと、既に多くの人がいた。

 応援する小さな旗を配っていたので、それをもらった。

 テレビで見たことはあるけれども、実際に来るとこんなに人がいっぱいいるんだね。

 すごいや。


 いつ選手が来るのか、駅伝の様子を確認するためにスマホで状況を聞きながら、待っていた。


 その場に止まって待っているだけだと、冬の朝はすごく寒い。

 持ってきたホッカイロを開けて手を温める。


 まだまだ選手は来ないようなので、お父さんに少し聞いてみた。



「お父さんの大学ってさ、最近強いじゃん? ‌今年は優勝出来るかな?」


 お父さんは、難しそうな顔をして答えてくれた。


「昨年のメンバーから、一気に世代交代したからな、どうなるかお父さんにも分からないな」

「そっか、分からないのか。毎回一位になるくらい強くなって欲しいな! ‌そしたら安心して見れるのに」


 私の言葉に、お父さんは優しく注意をした。


美和子みわこ、勝負っていうのは、どうなるか分からないから面白いんだぞ?」

「うーん……。それも、一理あると思うけどさ……。勝ってこそ、応援のしがいがあるって思っちゃうんだよなー」


「勝てるか分からないから、応援するんじゃないか?」

「……うーん。そういうものなのかなー?」


 そんな話をしていると、段々と遠くの方から選手が近づいてくるのが見えた。

 沿道にいる人達は、すごく熱の入った応援をし始めた。


「頑張れー!!」

「いけいけー!!」

「もう少しだぞー!!」


 遠くの方に見える選手たちは、とても一生懸命走っている。

 一位と二位はすごく僅差で。

 どちらが前に行ってもおかしくない状態に見える。


 どちらも、最後のスパートだと顎が上がり気味になり、肩で息をしている感じで走っている。

 とても辛そう。

 けど、相手に負けたくないと必死に走っている。


 その姿は、私にとても衝撃を与えた。


「……頑張れ」


 気付くと、私の口から言葉が漏れ出ていた。

 そんな私の言葉を、お父さんは聞いていたようだった。


「美和子、声が小さいぞ! それじゃあ選手には届かない。もっと大きな声で応援しないと!」



「頑張れ! 負けるな!!」

「そうだそうだ。走者は、必死に戦っている最中だから。一人一人は小さな声援でも、それがまとまって聞こえてきて、一身に浴びれば力が湧いてくるんだ。もっと大きな声で言ってみろ!」



「頑張れーー!!」


 お父さんの大学の選手は、私の前で追い抜いて、それで次の走者へとタスキを繋いだ。



 やっぱり、箱根駅伝ってカッコイイ。

 私、あらためて好きになった。

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