初夢

 うぅー、寒い寒い……。


 初詣に行こうって、お姉ちゃんに連れ出されて、近所の神社まで来たんだけど。

 今日は、こんなに寒いとは思わなかったよ。


 最寄りの神社は歩いて十分ほどのところにあった。

 人気のない裏道を通って、静かに歩いた。



紗奈さな、初夢見た?」


 お姉ちゃんが、ふと聞いてきた。

 私は、その質問に顔が熱くなった。



 ……初夢、見たんだよ。

 全部鮮明に覚えてる。


 私は、なんて、恥ずかしいものを見てしまったんだろう。


 好きな男の子と楽しくおしゃべりしていたんだ。

 彼の名前は悠斗ゆうと君。

 同じクラスで、優しくて面白くて、かっこいいんだ。


 でも、私は恥ずかしくて、彼に話しかけることもできない。

 だから、初夢で彼と話せたのは、とても嬉しかった。



「……初夢、見たよ」

 私は小さく答えた。


「えーいいなー! ‌どんな夢だったの?」

 姉が興味津々で聞いてきた。

 どうしようかな。正直に言おうかな……。


 お姉ちゃんに話したら、からってくるんだよな……。

 でも、お姉ちゃんはからかいながらも、いつも応援してくれるし。

 ちゃんと話しておこう。


「……初夢ね、悠斗君と楽しく話してたの」

 私は、顔が火照るのが分かった。


「えっ、悠斗君って、あの悠斗君?」

 お姉ちゃんの驚く声に、私はうんと頷いた。


 お姉ちゃんに何でも相談しちゃうから、悠斗君のことも知ってるんだ。


「それはすごいね。どんな話をしたの?」


 うぅ……、思い出すだけで恥ずかしい……。


 悠斗君と好きな本や映画や音楽の話をして、私の意見に共感してくれていたんだ。

 それで、私のことを褒めてくれていた。


 ……それで、私のことを好きだと言ってくれた。



 私はお姉ちゃんに答える。


「……いろいろ話したんだよ。楽しかったよ」


「それは良かったね。紗奈は、悠斗君のことが好きなんだね」

「えほっ……」


 直球な返事に、むせてしまった。


 もう、お姉ちゃんてば……。

 お姉ちゃんは、私の頭をなでなでしてくれた。



 神社に着いたら、姉と一緒にお賽銭を入れて、お参りをした。


 二礼二拍手一礼。

 きちんと、お姉ちゃんと二人で並んで。


 それで、神様にお願いをした。

 今朝の夢が、正夢になりますように……。



 お願いをし終わって、並んでいた列を抜けると、そこには、信じられない光景があった。


 悠斗君がいた。

 そして、私の方を見ていた。

 私に向かって、笑顔で手を振っていたんだ。


 私は驚いて、目を疑った。

 これは夢なの? ‌現実なの?


 私はわからなかった。

 嬉しさと緊張と期待と不安と。

 私はゆうとくんの方に歩いていった。


 姉は私を見て、にやりと笑った。

 姉は私にエールを送ってくれた。


「紗奈、頑張ってね。初夢って、本当になるんだよ」


 私は姉に「ありがとう」と言って、悠斗君のところに行った。

 悠斗君は私に話しかけてくれた。


「あけましておめでとう、紗奈。今年もよろしくね」


 私の心臓はバクバクと破裂しそうだった。

 初夢の通りに、答えた。


「あけましておめでとう、悠斗君。今年もよろしく」


 挨拶を交わした後、私は悠斗君と話した。

 それも初夢の通り。



 この後の展開はどうなったかって?

 それは、皆さんのご想像におまかせします。


 初夢って本当になるんだよ。

 初夢って好きです。

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