1月
元日に働くコンビニのお姉さん
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「はい。あけましておめでとうございます」
年始早々に、パパから頼まれたお買い物をしに、近所のコンビニに来ているのです。
テレビ見るの飽きちゃってたから良いけれども。
パパはお酒飲んじゃってて、ふらふらだからいけないやーって、べろべろになって。
ママもママで、手を叩きながらテレビ見て笑って。
私だけが、真面目なのです。
ちゃんと、今日分の冬休みの宿題を終わらせて、それで食器の洗い物とか、お手伝いもして。
見習って欲しいものですよ。
……まぁ、お年玉目当っていうところは、否定できないんですけれども。
やらない善より、やる偽善!
今年の私は、偽善でも良いこといっぱいしていくのです。
そしたら、お小遣い上げてもらえるかも知れないですし。
そしたらそしたら、欲しかった漫画買うんだ。
ふふふ。楽しみだな。
なんて、新年から妄想膨らんじゃったな。
こういうところがあるから、私はボーっとしてるとか、忘れっぽいとか言われるんだよね。
何買うんだっけ……。
店内をうろうろと探し回る。
たまご?
牛乳?
お茶とか飲み物だっけ?
……あれれ?
……忘れちゃった。
私がキョロキョロしていると、店員のお姉さんが話しかけてきた。
「ひとりでおつかい、偉いね。どうしたの? なにか欲しいものが見つからないのかな?」
「えっとね……」
いつも、コンビニで見かけるお姉さん。
買うもの忘れちゃったなんて、恥ずかしくて言い出しづらいな……。
「ふふふ。お客さん誰もいないし、お姉さんに色々聞いていいからね。お正月で切らしちゃうのは、なんだろうな? お醤油とかかな?」
「……違うと思う」
お姉さんは、店内を一緒に見回ってくれた。
「お砂糖とかじゃないよね? おせちに飽きたからレトルトカレーとか?」
「……そうだった気もするし、違う気もするし」
せっかくお姉さんが一緒に探してくれているのに、思い出せない……。
お年玉と、お小遣いに気を取られちゃって……。
「……あっ! 思い出した! お年玉の袋が欲しいって言ってたの! 親戚がうちに来るっていうからお年玉あげるんだって」
「ふふふ。なるほどね。それだったらあっちにあるよ。ついてきて」
お姉さんは、いつでも笑って対応してくれる。
いつも優しいお姉さん。
よくよく考えたら、元日からバイトしているなんて、すごいことだよね。
普通はみんな休みなのに。
ふてくされるでもなくて、いつも通り優しいお姉さん。
「ほら、ここにあるよ。全部、可愛い感じだから、どれ選んでも大丈夫だね」
お姉さんが見せてくれるお年玉の袋は、確かに全部可愛かった。
全部とっても良い。
「ありがとう、お姉さん! 助かりました。元日までご苦労様です」
「ふふ。大丈夫だよ。やらない善より、やる偽善って思ってるしね。店長さん困ってたから、私が出てきたんだー。そのお礼に、店長さんから今日お年玉もらえるんだ」
なんと、お姉さんも私と同じ。
けど、それでも頑張るお姉さんは、とても偉く見えた。
元日に働くコンビニのお姉さん。
私、大好き。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます