サンタさん

 今日はクリスマスイブ。

 せっかくの日なのに、部活があって彼氏の達也たつやに会えなかったから、家に帰って電話で話すんだ。


「今日の夜に、サンタさんが街にやってくるんだよね」

「そうか、そういう日だね」


「ふふふ。楽しみだね」


 待ちに待ったクリスマス。

 今年お願いしようと思ってたんだけれども、その前に彼氏が出来てしまったんだよ。

 先に貰っちゃたのかもだけど、ちゃんと今年も貰えるよね。

 私、良い子にしてたもん。


 きっと、達也も良い子にしてたかな?


「達也は、今年はプレゼント何をもらうの?」

「今年は貰えないかな。親と喧嘩しちゃったし、無駄遣いが多いって言わちゃったから」


 達也は、悪い子だなー。

 無駄遣いは、やっちゃダメだね!


「悪い子にしてたら、サンタさんからプレゼント貰えないもんね。しょうがないなー、達也は。私が貰ったら分けてあげるよ」

「……サンタ?」


 達也は、不思議そうに聞いてくる。


 あれれ……?

 サンタさんって、知ってるよね?

 有名人のはず……。



「あれ……? ‌サンタさんだよ? ‌知ってるよね?」


 一年に一回の事だから、忘れちゃったのかな?

 忘れん坊だな、達也は。

 だから、ついつい悪いことしちゃったのかな?


 私は毎年ちゃんと覚えてて、良い子にしてるからプレゼント貰えてるもんね。


 達也は、答えてくれた。


「……サンタクロースからプレゼント貰うとか、もうそんな歳じゃないだろ? ‌高校生にもなって」

「……うん? ‌それってどういうこと?」



 高校生になると、貰えなくなっちゃうのかな?

 子供のうちだけって、決まりがあるんだっけ?


 達也の答えを待ってるのに、黙っちゃったみたい……。



 プレゼント貰えるのが子供だけとか、私は教えて貰ってないな……。

 せっかく良い子にしてたのにな……。


 けど、達也の負け惜しみって可能性もあるよね!

 あいつ、自分が悪い子にしてて貰えないからって。

 私が何か貰ったら、分けてあげようって思ってたのに。

 イジワルなこと言うんだから、達也はー。


 達也から返事が返ってきた。


「サンタって、どこに住んでるか知ってるのか?」


 そんな質問、答えられるに決まってるじゃん。


「もちろん知ってるよ、フィンランドだよ!」

「そしたらさ、そこからプレゼントって、どうやって配るんだよ?」


「それは、すごい早いトナカイさんにソリを引かせて」

「はぁ……、お前にちゃんと、教えてやらないとな」


「何を教えるっていうの? ‌私は良い子だったからプレゼント貰えるもん……」



 その時、家のチャイムが鳴った。

 こんな夜中に回覧板とかかな?


 あぁ、親がいないんだ、今日。


 私が、出ないといけないか。

 達也は、一旦待たせておこう。

 後で問い詰めてやらないとだな。

 私をイジめてくる悪い子だもんね、達也は……。



「はーい、どちら様ですかー?」


 玄関のドアを開けると、そこに達也がいた。


「……あれ? ‌達也、なんでいるの?」

「お前に教えてやらないといけないよな。サンタクロースなんてさ……」


 達也は、言葉に詰まった。

 なんなのよ……。


 何が言いたいのよ……。



「……サンタクロースは手が足りないからさ。悪い子にお手伝いをやらされるんだよ。ほら、プレゼント持って来たよ」


「……ほえ?」、


「……お前、俺に分けてくれるって言ってたからさ、一つ俺にくれよ。お揃いのリングっぽいんだよ、これ」


 綺麗な子箱に入ってるプレゼント。

 やっぱり、貰えた!


 良かった。

 私が良い子にしてたからだ。



 ……せっかくだから達也にも、おすそ分けしてあげようかな。


「今日さ、親がいないから。ちょっと寄ってく?」



 クリスマスイブ。

 今日は、夜にサンタさんは来ないらしい。

 代わりに、サンタさんの代理が来てくれたから。

 いくら夜更かししても、大丈夫だね。


「プレゼントと達也を私の家に連れてきてくれるなんて、サンタさんってやっぱりやるね! ‌私、やっぱり、好きだよ!」

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