紙に書き出す

 私は、いつも悩んでばかりいる女子高生。


 学校の成績も、友達関係も、恋愛も、何もかもうまくいかない。

 どうすればいいのか。

 自分が何をしたいのか、何が好きなのか、何が得意なのか、わからないよ……。


 そんな私に、進路を決めろって言われても。



 悩んでいる私に、先生が一枚の紙とペンを渡してくれた。


「君は、自分のことをよく知らないんだ。だったら、紙に書き出してみなさい。自分の好きなもの、嫌いなもの、やりたいこと、やりたくないこと、なんでもいいから。自分の気持ちに正直になるんだよ。まずは、それをやってみよう?」


 こんなことで、何が変わるのかな?

 でも、先生は優しく微笑んでくれる。


「紙に書くことで、自分の心に向き合えるんだよ。それが、自分を変える第一歩なんだ」


 と言ってくれた。


 私の隣の席に座って、目線を合わせてくる。

 親身になってくれる先生だって知ってる。

 やってみようかな?


 私は試しに紙に書き始めた。

 先生に見られてるとちょっと恥ずかしいけれども……。


 やってみよう。



 好きなものは、音楽と猫とチョコレート。

 嫌いなものは、虫と辛いものと数学。

 やりたいことは、旅行とカラオケとショッピング。

 やりたくないことは、勉強と掃除と運動。


 ふふふ。

 先生の前で勉強やりたくないって書いちゃってる。

 私が書いた勉強の文字を指差して笑ってる。


「いいよ、いいよ! ‌正直が一番!」


 そんなことも言ってもらえて、だんだん楽しくなってきたな。


 自分のことを知ることが、こんなにも面白いなんて。

 紙に書くことで、自分の気持ちが整理されていくのがわかった。

 自分の好きなものについてもっと詳しく書いてみたくなった。



 例えば、音楽は、どんなジャンルが好きなのか。

 猫は、どんな種類が好きなのか。

 チョコレートは、どんな味が好きなのか。


 紙に書き出すことで、自分の興味や趣味がはっきりしてきた気がする。私の好きな物を再認識する気分。やっぱりそれが好きだよねって、手と会話してるみたい。

 自分は、こんなにも素敵なものが好きなんだ。

 分かるよーって。これを書いてる人と友達になりたい気分。書いてるのは自分って言うのはだけれども。



「じゃあ、嫌いでもやらなきゃいけないことは、どうすれば良いと思う?」


 なかなか書けなかった。

 それが分からないから困ってるわけで。


「……それが、わからないんです」

「うんうん。正直が一番。実は、それが答えだよ。分からなかったら、誰かに相談してみるのが良いんだ」


 ……なるほど?


「誰かに相談するってことで、一度吐き出すと、悩みがはっきりして、わかりやすいだろ? ‌そこに、どうしたいか、選択肢を色々と書いてみるといい」


 私は、やっぱり大学には行きたい。

 どこに行けるかっていうのは、分からないけれども。


 とりあえず紙に、『大学に行きたい』とだけ書くと、先生はOKと、手でジェスチャーしてくれた。



「それだけでも、OK!」


 簡単なことだけど、明確になった気がする。

 あとは、これをどう解決すればいいかを考えれば良いんだね。


「分からないことは、先生が分かるまで教えてあげるから大丈夫だ!」

「はい!」


 紙に書き出すってやり方、楽しいな。このやり方、好きだな。

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