三国志

 三国志って、奥が深くて面白いのかも。

 私は、図書館で本を借りようとしていたときに、そんなことを思いました。


 本棚の前に立っているのは、クラスで一番頭がいいと言われている、くんです。

 彼は、いつも三国志の本を読んでいるのです。

 私は、三国志に興味がないわけではないけれど、難しそうで、手に取る勇気がありませんでした。


「あの、すみません。李くん、その本、借りるんですか?」


 いつも気になっていたので、私は勢いで声をかけてみました。

 そうしたら、李くんは、驚いたように振り返りました。

 初めて間近で見る李くんの顔。

 黒いメガネから見える目は、とても綺麗です。

 意外とカッコイイのに、あまり話さないので、クラスでは浮いている感じがします。


「あ、はい。借ります」


 李くんは、そう言って、本を手に取りました。

 本の表紙には、三国志と大きく書かれていたので、私は思わず尋ねました。


「李くん、三国志が好きなんですか?」

「え、ええ。好きです」


 李くんは、少し照れたように答えました。

 彼の顔が赤くなっているようだったので、なんだか可愛いなと思いました。


「どうして好きなんですか?」


 私は、興味本位で聞いてみました。

 私の何気ない質問にも李くんはしっかり考えてくれて、しばらく考えてから返事をしてくれました。


「三国志は、歴史の中で一番面白い時代だと思います。英雄や名将がたくさん出てきて、戦争や策略が繰り広げられています。それに、人間の感情や思想も描かれていて、ドラマチックです」

「へえ、そうなんですか」


「中でも一番ドラマチックなエピソードがですね……」


 李君は続けて、三国志について熱く語り始めました。

 彼は、曹操や劉備や孫権といった三国の君主のことや、関羽や張飛や趙雲といった武将のことや、諸葛亮や周瑜や司馬懿といった軍師のことを次々と話して、三国志の中で好きなエピソードや名言や教訓を紹介してくれました。

 私の頭には、中々インプットされませんでしたが、三国志が好きなんだなっていう気持ちだけは、私に伝わりました。


 李君は、三国志の良いところだけでなく、反省点や疑問点も挙げてくれました。


 私は、李くんの話を聞いているうちに、三国志に興味を持ち始めました。

 三国志を語る時の李君の目は、いつも以上にキラキラと輝いていました。


 私は、李君の目を見ていると、なんでかドキドキしていました。

 一通り話終わると、李君は私に三国志の本を勧めてくれました。


「これ、読んでみてください。三国志の入門書です。分かりやすくて、面白いです」


 李くんは、そう言って、本を手渡しました。

 私は、本を受け取りました。


「ありがとう。読んでみます」


 私は李君に、笑顔で返事しました。

 三国志って難しそうだけど、今聞いた知識があれば私にも分かりそうかもしれない。


 李くんも、笑顔で頷きました。


「じゃあ、また今度、図書館で会いましょう。続きを解説します」


 李くんは、そう言って、自分の借りる本を持って去っていきました。

 私は、彼の後ろ姿を見送りました。


 三国志って、奥が深いんだな。三国志好きになったかも。

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